アフターピルはどのように効きますか?
アフターピルには妊娠を防ぐための2つの働きがあります
妊娠は「排卵」「受精」「着床」によって成立します。アフターピルにはこれらを個々に阻害します。アフターピルはその服用後に平均5日間(長い場合1週間)にわたって排卵を止める作用があります。このため、一般的な寿命が2~3日ある精子が子宮内にある間、排卵を抑制することで受精を妨げる効果があります。また、精子が体の中に入ったタイミングで、既に排卵してしまっていたり、排卵の抑制が間に合わなかった場合は、子宮内膜を薄くして受精卵が着床しにくい環境を作ります。複数の作用で妊娠の成立をより確実に防いでくれます。
アフターピルの作用機序
排卵を抑制する作用
アフターピルには排卵を抑制する働きがあります。この有効成分「エストロゲン(黄体ホルモン)」は、卵胞(卵子が入った袋状の組織)の成熟を遅らせることで排卵自体を遅らせる効果があります。排卵がないと受精そのものが行われないので、妊娠が成立しません。排卵前にアフターピルの服用ができていると、妊娠の可能性は限りなくゼロに近くなります。
子宮内膜の増殖を抑える作用
通常の月経では、卵胞期から排卵期にかけてエストロゲン(卵胞ホルモン)の働きで子宮内膜が増殖し、受精卵を着床させやすい環境を整えています。また万が一、排卵日前後に性交渉を行って、アフターピルによる排卵の抑制が間に合わずに受精した場合でも、アフターピルは一時的に子宮内膜の増殖を抑え、受精卵が子宮内膜で着床するのを防ぎます。受精卵が着床しやすい環境とはよくふかふかなベッドの状態に例えられますが、これから厚みをなくしてしまうことで効果が現れます。
アフターピルは、性交渉の24時間以内の服用で、80%〜95%ほどの避妊効果があります。これの服用が排卵日後であっても避妊の成功率が劇的に大きく変わることはありません。しかし、どのタイミングでも対応が必要であればそれが早いに越したことはありません。日本国内でもっとも一般的に処方されている「ノルレボ(レボノルゲストレル)」と呼ばれるアフターピルの、性交渉後の時間経過と避妊効果の関係は次の通りです。
問題のある性交渉後、アフタープル服用のタイミングによる有効性の変化
高い避妊効果が期待できますが、問題の性交渉から時間が経過するとともに、その避妊効果は徐々に下がっていきます。ある意味では時間とのたたかいですので、心配なことがおこった場合は早めに病院で受診することが重要です。
図:経過時間チェック(準備中)
アフターピルと低用量ピルとでは何が違いますか?
アフターピルと低用量ピルの違い
アフターピルと低用量ピルもどちらも避妊を目的とした薬です。作用機序も基本的には同じですが、有効成分の用量が異なるため効き方も差異があります。低用量ピルは毎日服用することで排卵を止め、子宮内膜の増殖を抑制することで受精卵が着床しづらい状態を作り、正しい使用でほぼ100%の避妊を行うことができます。また、低用量ピルは女性ホルモンの分泌を調整してくれるため、月経痛や月経不順、月経前症候群(PMS)ほか女性特有の症状の緩和にも効果があります。低用量ピルの避妊以外の効果についてはこちら→
一方、アフターピルは子供をまだ望まない段階で、避妊せずに性交渉を行った、コンドームなどの避妊に失敗があった、低用量ピルの服用を忘れた場合、ほかに性的暴行後など望まない妊娠を避けるための緊急避妊に用いられる薬です。問題の性交渉後の72時間以内に服用すれば約95%の避妊成功率、これを過ぎてしまった場合でも、120時間以内であれば高い成功率が見込めます。このように効果には期待できるアフターピルですが、身体の調子を一時的にみだすものでもあり、通常の避妊はコンドームや低用量ピルなどで対応し、あくまで緊急時に使用するものと考えるのがよいです。