ウィメンズヘルス(女性の健康)とは

男性または女性であることは、生物学的および性別関連の違いの結果として、健康に重大な影響を及ぼします。多くの社会では、社会文化的要因に根ざした差別によって不利な立場に置かれているため、女性と女児の健康は特に懸念されています。たとえば、女性と女児は、HIV / AIDSに対する脆弱性の増大に直面しています。

女性と女児が質の高い医療サービスの恩恵を受け、可能な限り最高の健康レベルを達成することを妨げる社会文化的要因には、次のものがあります。

男性と女性の間の不平等な権力関係。
教育と有給雇用の機会を減らす社会的規範。
女性の生殖の役割に専念する。
身体的、性的、精神的暴力の潜在的または実際の経験。

貧困は男性と女性の両方にとって健康に良い結果をもたらす重要な障壁ですが、貧困は、たとえば、摂食習慣(栄養失調)や安全でない調理用燃料(COPD)の使用により、女性と少女の健康に大きな負担をかける傾向があります。

当院におけるウィメンズヘルスへの取り組み

ウィメンズヘルスとは、女性の一生涯にわたる健康という観点から、その生活の質(QOL)の向上を目的として、心身面のみならず社会的な側面をも総合的に捉え、身体の構造やライフスタイルの性差にも注目し、女性の意思を尊重した医療分野とそれを取り巻く動きのことです。

女性には月経・妊娠・出産・閉経に代表される生涯を通じた体の変化、男性との身体的相違がありますが、ウィメンズヘルスという視点からの取り組みは、女性特有の疾患の治療や予防といったいわゆる性差医療を扱うことだけではありません。社会面でも仕事・家事・育児といった人生の節目における役割の変化など、男性に対してとは違う見方をもって対応するという新しい見解です。

重要度からいえば子育て、不妊治療、月経関連疾患、夫の暴力、およびメンタルヘルスのみならず、災害や放射能の汚染などの母子の健康に影響するものから、女性がより快適に生活するためのサービスや商品まで、医療の領域以外にもいうことができます。

医療分野では比較的新しい考え方で、1980年代から米国などで始まり、日本では2008年に医学系研究科の一分野として位置づけられました。これまでも女性の健康については産婦人科、精神科、心理学、社会学および公衆衛生学などをもとに行なわれてきましたが、今後はとくに女性の生涯の健康の向上には「女性」の立場を熟慮した導きが必要です。そのため、これまでの手術や薬物療法などの基本の治療法に加え、女性の背後にある心理社会的要因に敏感な支援を行うことが必要です。

当院ではウィメンズヘルスの視点にたった医療機関として、避妊薬などの処方を行います。これまで自身の避妊にかかる肉体的・精神的な苦痛、経済的な負担は当然自分だけで負うものと考えていませんでしたか?避妊すべきときに失敗があり、自分だけが心配でしようがなく、相手はどこか他人事のようにしているのを不満に、あるいは淋しく思ったことはありませんか?女性用の避妊具の費用をほんの半分でも払おうと言ってくれた人はいましたか?ウィメンズヘルスケア・オンラインはその名前にかなうような診療を目指しています。

WHOより抜粋、訳

ウィメンズ・ヘルスの領域
※当院で対応しているものは緊急避妊薬、低用量ピルの処方に至る診療に限っています。

Womens Health
Services and Conditions

Nexplanon®:ネクスプラノン(オルガノン社)
エトノゲストレルというホルモンを含ませたごく小さなプラスチックの円筒を皮下に挿し込む避妊法です。ここからホルモンが少しずつ体内に放出され約3年間、避妊効果が続きます。副作用はピル服用時のものと同じくある可能性がありますが、ピルと比べて飲み忘れによる失敗がないため避妊効果はきわめて高く、避妊用リングに使用に抵抗を感じる方にも使いやすいうえ、腕の皮下に埋め込まれるので外見からは使っていることがわかりません。また、妊娠を望むことになった場合、これを除去すればその日から避妊の効果はなくなりますので、いつでも人生計画の変更が可能です。

Pelvic Pain:骨盤の痛み
腹部より最下部の辺りに起こる不快感をいいます。外性器(外陰部)に起こる痛みは含みませんが、女性の生殖器系の病気がこの原因になっている可能性(ほか消化器官、筋骨格系疾患、心疾患などが原因の場合も)があります。痛みの種類や期間はさまざまです。

Prenatal Care:出産前ケア
女性が出産前に受ける医療ケア全般を指します。医療機関で管理する場合、(日本国内ではこのケースが殆ど)助産師、医師、看護師、などが妊娠と出産に関する情報、および妊婦自身と赤ちゃんが健康かどうかを確認するための検査や診察を提供します。医療面以外では妊婦と周囲で赤ちゃんを迎え入れる住環境づくり、妊娠を乗り切るからだづくり、出産に対しての資金準備、妊娠期を楽しむ心の準備なども必要です。

Recurrent Miscarriages:不育症
妊娠は成立するものの、流産や死産、新生児死亡(新生児:出生後28日を経過しない乳児。この場合は新生児側に原因があることが多い)を繰り返し、結果的に子どもを持てない病態をいいます。これは、偶然起こることもあれば、何か要因があることもあります。要因は内分泌異常や血栓性素因などが挙げられますが、詳細な検査を行っても約半数は原因が特定できないといわれています。日本では2回以上の流産・死産があれば不育症と診断し、原因を探索することを推奨しています。

Hormone Replacement:ホルモン療法
婦人科疾患は女性ホルモンが関係しているものが多く、各種症状に対してホルモン剤、あるいはホルモンの分泌を促進または抑制する薬剤を用いる治療法の総称です。子宮筋腫、子宮内膜症、月経障害、更年期障害などがその対象です。

IUD:避妊用リング
IUDとはIntrauterine deviceの略で、避妊の目的で子宮内に装着する小さなリング状の器具のことです。装着後は数年にわたって避妊が可能なので、長期間の避妊を望む女性に適しています。ピルのように内服したり、コンドームのように性交渉の前に準備が要らないので煩わしさがありません。

Vaginal Dryness:膣乾燥
膣内の粘膜は精子が活動できるようアルカリ性を保ち、この分泌物で性交時の摩擦を減らしていますが加齢とともに分泌物が少なくなり、膣内に炎症、痒み、痛みほか、セックスへの関心の消失など不都合な症状が発生します。この原因は主に加齢に伴うエストロゲンレベルの低下ですが、ほかに授乳、喫煙、うつ、激しい運動、特定の治療法の副作用なども挙げられます。一般的には軟膏などで快癒することもありますがデリケートな部分なので、場合によっては医療機関への受診が必要です。

Painful Intercourse:性交時痛
これを始めようとする時やその最中の痛みのことを言います。 我慢を続けているとやがて性行為自体に恐怖感を感じるようにさえなります。 原因として処女膜強靭症や炎症など器質性のものには相応の治療を、出産後のホルモンの乱れや性行為に対するトラウマなど心因性のものにはカウンセリング的な対応も含めたものが必要になるでしょう。

Pediatric Gynecology:小児婦人科
小児および思春期の女性対象の婦人科はその分野内においても特別なケアが施術面、精神面両方で必要です。これに対する専門的な訓練を受けた部門を設けている医療機関があります。

Fertility:受胎能力
受胎に導く能力のことですが、女性に関しては加齢により卵巣機能の低下がおこると卵の質もそれに倣うため、受胎の確率が一定の年齢で急激に下がります。一方男性は 加齢による男性ホルモンのゆるやかな低下はあるものの、たいてい老年期に至っても生殖の能力は維持されます。この男女差は、女性は体内で胎児を育てるために、加齢で他の臓器の機能低下が起きる前に、身体に負担のかかる妊娠、出産、子育てが終了できるという点で生物学上は利点があったと思われますが、寿命が延びた現代社会では、女性の不利益となっているもの事実です。

Pelvic Prolapse:骨盤臓器脱
筋肉を中心とする骨盤底によって支えられている子宮、膀胱、直腸といった骨盤内の臓器が外に出てくる(下がる)女性特有の病気です。しかし、出産や加齢などによって骨盤底が傷むと臓器が下がりやすくなり様々な症状がでてきます。発症率は高いのですが、恥ずかしさから長い間受診していない方も多いです。主な治療は体操や腟内装具などの保存的治療と手術に大別されますが、程度や年齢によって治療法を選択します。

Menopause:閉経
閉経とは卵巣の機能が消失し、月経が止まった状態のことです。月経が来ない状態が1年以上と確認された時点で閉経年齢とします。これには個人差がありますが、日本人では40~50歳代後半で多くの人が閉経となります。また、閉経を中心とした前後10年間を更年期と呼び、この期間は女性ホルモン濃度が大きく揺らぎながら低下していくため、月経異常を含めさまざまな症状が見られます。特に症状が重い状態を指す更年期障害や、若年で早発卵巣不全を起こした場合には薬物などで治療を行うことがあります。

Abortions:中絶
何らかの原因で胎児が死亡したことを言い、日本では一般的に人工妊娠中絶を指します。
人工妊娠中絶手術は母体保護法が適応され、妊娠初期と妊娠後期とでは手術方法が異なります。妊娠初期では器械的に子宮の内容物を除去する方法として、掻爬法または吸引法が用いられます。通常は短時間の手術で済み、問題がなければその日のうちに帰宅できます。妊娠後期では子宮収縮剤で人工的に陣痛を起こし流産させる方法をとります。体に負担がかかるため通常は数日間の入院が必要になります。中絶手術はほとんどの場合、健康保険の適応にはなりませんので、中絶を選択せざるをえない場合はできるだけ早く決断した方がさまざまな負担が少なくなります。この手術を実施できるのは母体保護法により指定された「指定医師」のみですので、母体保護法指定医を標榜する医療機関で受けることになります。海外では妊娠初期の中絶薬を発売している国もありますが、日本では現在認可されていません。重大な事故などの報告もあり、厚労省より注意喚起が行われています。

Colposcopy:コルポスコピー検査(コルポ生検)
頚部精密検査のことで、子宮の頸部をコルポスコピーという拡大鏡を使って観察する検査で、子宮頸癌検診で異常を指摘された方が対象となります。コルポスコピーで観察の上、所見に異常がある部分を数ミリ大で切除し、病理検査が行われます。

Endometriosis:子宮内膜症
通常なら子宮の内側の壁を覆っている子宮内膜が、子宮の内腔以外(卵巣や腹膜、子宮の壁の中など)で発生・発育を続ける病気で、若い世代に発症することが多いとされています。子宮内膜は本来、受精卵が着床する場所で、女性ホルモンのはたらきによって妊娠に向け増殖・成熟が促されますが、排卵後も着床がない場合は、子宮内膜が子宮の壁から剥がれ落ちて出血と共に体外へ排出されます。これを月経(生理)と呼び、月経が終了すると次の妊娠の機会に備え再び子宮内膜の増殖が始まります。この約1か月の性周期(月経)は、子宮内膜症で形成される異常な組織にも影響を与え、月経前後に出血を伴う痛みなどを起こしたり、体外へ排出されずに体の中に留まって慢性的な腹痛を引き起こしたり、不妊症の原因になったりすることも少なくありません。治療では薬物療法や手術などが用いられるものの、再発率が高く将来ガン化することもあるため、慎重な経過観察が必要になります。

Essure®:エシュア(バイエル社)
麻酔を伴う手術やホルモン剤不要で半永久的に避妊ができると喧伝されていた子宮内避妊器具の一種でしたが、その副作用や効能に問題があるとされ欧州・米国で順次販売が停止されました。

High Risk Pregnancy:ハイリスク妊娠
妊娠中・出産中・産後、母体または胎児に、健康上の問題や合併症を悪化や死の危険があるなどリスクを伴う可能性のある妊娠を意味します。例として、流産・早産の既往、子宮摘出術その他産婦人科手術の既往、多胎妊娠、いわゆる逆子、低年齢妊娠、臓器の疾患、薬物・アルコール乱用、HIV感染症などこれらの危険因子がある方で妊娠中あるいは妊娠を計画している場合には、適切な設備の整った医療機関への受診が必要です。

Fibroids:子宮筋腫
子宮の壁にできる良性の腫瘍のことです。子宮の壁は平滑筋という筋肉でできているため、「筋腫」と呼ばれます。悪性腫瘍(がん)のように急激に大きくなったり転移したりすることはありませんが、発症すると徐々に大きくなって下腹部痛や貧血などの原因になることも少なくありません。女性ホルモンの影響を受けて大きくなり、その分泌が盛んになる20歳代頃から発症しやすくなります。(閉経を迎えると徐々に小さくなります)また、30歳代以降の女性であれば3~4割に見られるありふれた病気ですが、大きくなると日常生活に支障をきたしたり、不妊症の原因になったりするため、薬物療法や手術が必要になることがあります。

HPV:ヒトパピロマウイルス
性交渉の経験がある女性であれば約半数以上が生涯で一度は感染するとも考えられている一般的なウイルスです。これには多くの種類が存在し一部のタイプががんと関連することが明らかとなっています。(子宮頸、肛門、腟ガンなどのガンや尖圭コンジローマなど、多くの病気の発生に関わってます)最近では若い女性が子宮頸がんに罹患することが増えていることもあり問題視されているウイルスです。ひとたび感染すると自然に排除されることもありますが、そのまま子宮頸部にとどまることもあります。これが長い間排除されず感染したままでいると、子宮頸ガン(早期発見時は治療が容易だが、進行時は難しい)が発生すると考えられています。

Tubal Ligation:卵管結紮術
卵管をしばることで、卵子と精子の接触を妨げ受精できないようにします。再び妊娠を望むことになった場合は卵管吻合術で機能の回復は望めますが(卵管を切除した場合は望めない)成功率は高くなく、この施術を受けるにあたっては熟考が必要です。

Hysterectomy:子宮摘出術
一部の婦人科がんの治療や、子宮内膜症、重い子宮筋腫(症状が重い場合のみ)などの治療として行われます。下腹部を切開して子宮を取り出す開腹手術、腟から子宮を取り出す腟式手術(身体への負担がより少ない)があります。いずれも全身麻酔で行われ、入院期間は数日、回復には1ヶ月半程度かかります。近年はじまったロボットアームを使った腹腔鏡下手術での入院は1日で済み、もっとも早く日常生活に戻ることができます。

Vaginal Infections:膣感染症
細菌やバクテリアの感染や、体質に合わない石けんや衣類などが原因で、膣周辺に痒みや痛みが現れる症状です。おりもの量が増え、臭いもきつくなることで気づく場合が多いですが、原因に応じた比較的手に入りやすい薬で快癒することが殆どです。ただし妊娠中である、発熱がある、以前と違う症状がある、再発したなどの場合は医療機関への相談が必要です。

LEEP Procedure:リープ法(Loop Electrosurgical Excision Procedure)
ループ型の高周波電気メスとその発生装置の組み合わせ装置を用いた切除術で、産婦人科領域では、主に子宮頚部、すなわち子宮の入り口近くにできた病変の切除に使用されます。子宮頚部の病変として子宮頚管ポリープ、頚部筋腫などの良性腫瘍と、悪性腫瘍である子宮頚がんなどが対象で、子宮を温存しながら治療できるという大変なメリットがあります。

Laparoscopy / Minimally Invasive Surgery腹腔鏡下手術・低侵襲手術
腹腔鏡下手術は内視鏡手術とも呼ばれ、開腹手術ではお腹を大きく切開する一方、この方式では数ミリの穴を数ヶ所開けるだけです。(そのため患者さんの体への負担は小さくなります。これを低侵襲と呼びます)開けた穴にはポートと呼ばれる器具を挿入。ポートの1つから腹腔鏡を挿入し、そこからお腹の中の様子をモニターで見ることができます。残りのポートからは、先端にはさみ、電気メス、ピンセットなどが付いて鉗子を挿入し、モニターを見ながら手術を進めていきます。