梅毒は性行為で粘膜や皮膚の小さな傷から梅毒トレポネーマという細菌が侵入することでおこる性感染症のひとつです。感染すると発疹などの症状が現れますが、時間がたつとなくなるため治ったと勘違いしてしまうことがあります。この病気はペニシリンによる治療法が確立されてからは完治が可能になったものの、検査や治療が遅れると脳や心臓に重大な合併症を引きおこし、また胎児にも感染するので、まずはかかっていないかを検査で確認することが重要です。
女性で梅毒が特に増加
日本では1948年から梅毒の発生について報告する制度があります。以来1967年の約11000人をピークに減少傾向にあったのですが、新型コロナの流行とほぼ同じ時期に急増し、2022年には12000人を超える報告がありました。また男性は全ての年代に感染者が分布する一方、女性では20代が突出しているのが特徴です。
妊娠中の梅毒感染
妊婦が感染すると、母親だけでなく胎盤を通じて胎児にも感染し、死産や早産につながることがあります。また、胎児の神経や骨などに異常をもって生まれたり、遅れて症状が出ることもあります。妊娠前後の梅毒感染には注意を払う必要があります。
梅毒の症状
梅毒は年単位で、さまざまな症状が現れては消えるのが大きな特徴です。また各症状の現れ方は大きく3の時期に分けられ、途中で症状がなくなったようにみえることもあります。
| 感染 |  |
感染している粘膜などへの接触により感染後、潜伏 |
| 第Ⅰ期 3週間～ |
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感染後3週間程度が経過すると、感染部位に、硬いイボ（初期硬結、硬性下疳と呼ぶ）のような皮疹が生じるほか、脚の付け根のリンパ節が腫れることがあります。ただしこれらは無痛で気づきにくいことも多く、数週間で症状が消えてしまいます。 |
| 第Ⅱ期 3ヶ月～ |
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梅毒トレポネーマが血液にのって全身に広がり、手のひら、足の裏、身体に痛みや痒みもない赤い発疹（バラ疹）ができます。この発疹は痕を残さずなくなりますが、感染から約1年、この時期は特に他の人に感染させやすい時期でもあります。 |
| 第Ⅲ期 3年～ |
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年単位で症状のない状態が続いたあと、一部の感染者は全身で炎症が進行し皮膚や臓器などにゴムのような腫瘍が発生します。 |
| 第Ⅳ期 10年～ |
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現在おこることは稀ですが、心臓では大動脈瘤など、神経系では進行性麻痺など致死性のある病変が現れます。 |
梅毒はどうやって感染する？
感染者の皮膚や粘膜を通じて感染します。梅毒に感染する機会の多くは性行為によるものです。性器だけでなく、口や肛門などの性的な接触すべてがきっかけです。また、稀ですが傷口からも感染するため、感染者とのキスや歯ブラシの共有など体液に触れることが感染経路の一つとなることがあります。梅毒は発疹など早期症状がなくなると無症状の期間が続きますが、自然には治ることはありません。また、治療が終わっても状況によって何度でも感染します。
梅毒はいつから検査できる？
梅毒（ほかの性感染症）に感染しているか不安なときは、早めに検査・受診しましょう。泌尿器科、産婦人科などで血液検査（抗体検査）を受けることができますが、梅毒は5類感染症に指定されていて、医師は感染者を確認すると保健所に7日以内に届けます。潜伏期間は長くて8週間目ですから、それ以降のタイミングでチェックを行ってください。
感染の心配はあるけれど、まだ誰にも知られたくない。病院に行くのも気が重い。自分一人で感染の可能性を確認したいときは先ずはセルフチェック検査キットをご利用下さい。チェックが出来るのは、早くて感染の可能性があった時点から6週間~8週間です。
梅毒の治療はどのように行いますか？
ペニシリンという抗菌薬を基本的に使います。日本国内では発見が遅れることはあまりないため、2~8週間程度の内服治療が行われることがほとんどです。感染後期では点滴治療が一般的で、心臓や神経に症状があった場合はそれらの必要に応じた対症療法がとられます。
梅毒を予防するには？
梅毒患者との性交渉を避けることが第一ですが、相手の病気に気づかないまま接触するのを防ぐためにコンドームを使うことはリスクを下げます。特定のパートナー同士で一方の感染がわかった場合は、治療が終わるまで性交渉は控え、お相手の検査も強くおすすめします。また、梅毒に感染しているとＨＩＶにも感染しやすくなるため、念のため両方の検査を受けておいたほうがよいです。
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