月経痛・月経過多がおさえられる

月経および月経痛とは?

女性の体内では来たるべき妊娠に備え、およそ1ヶ月のサイクルで生理が繰り返されます。これには2つの重要な女性ホルモン:エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)のはたらきが関わっています。まず卵巣内で、卵子を包む卵胞を育てるエストロゲンが作用し排卵の準備を整えます。

充分に育った卵子が卵巣から卵管を通り子宮に押し出されると(排卵)、次はプロゲステロンが分泌され、子宮内膜全体をふかふかに厚くして妊娠の準備を整えます。ここへ受精卵が着床するとそのまま妊娠しますが、着床しなかった場合には厚くなった子宮内膜が役目を終えてはがれ落ち、血液と一緒に体外に排出されます。このとき *プロスタグランジンという物質が分泌され子宮の収縮を促します。この際に子宮の周囲は充血を伴って強い痛みをおこします。

生理中の体内の変化生理中の身体内の変化

生理痛のもと生理痛のもと→プロスタグランジン
*プロスタグランジンとは:子宮の収縮を促して生理時の経血を身体の外に排出する役割を果たす物質で、月経(生理)の直前から前半にかけて体内で急激に増えます。この量が多すぎると収縮が強くなりすぎて刺すような痛みが発生します。また、血管を収縮させる作用もあるので、腰痛やだるさ、冷えのほか、胃腸の働きにも悪影響を与えるのでむかつきや下痢を起こすこともあります。陣痛のときの痛みもこのプロスタグランジンが原因です。また、生理痛に悩む女性は、子宮内膜や経血に含まれるプロスタグランジンの量が相対的に多いことが判明しています。

月経痛が軽くなり、貧血が改善される

通常の月経のサイクルでは卵胞の生育とともに、子宮内膜は排卵にむけて徐々に厚くなり、排卵後はさらにその厚みが増し妊娠に備えます。しかし妊娠しなければ厚くなった内膜は排出されます。これが月経です。いつもの月経は毎回妊娠に備えて準備をしているので量も多いのです。

低用量ピルは排卵を抑制し、女性ホルモンの分泌を抑えます。この分泌が抑えられると、子宮の内膜は厚くなれません。また黄体ホルモンは子宮の内膜に直接働きかけ厚くなるのを抑えます。低用量ピルの服用中は子宮内膜の量が減って子宮がそれを押し出す負担も軽くなるため、自然周期のような強い収縮でなくても内膜が排出できるようになり、月経痛が軽くなります。痛みと共に排出される月経の量も減るため失う血液量も減るため、結果的に貧血を防ぐことになります。

ピル服用中の体内の変化治療時のホルモンの変化

治療時の子宮内膜の変化

低用量ピルが出血や痛みを軽減

日常生活に困難を感じるほどの痛みは「月経困難症」

学校や会社に行けないほど痛みが強く、下腹部痛のほかに腰痛や頭痛、吐き気、やめまいなどの全身症状を伴う場合は「月経困難症」と呼びます。低用量ピルの継続的な服用でほとんどの症状は軽快します。当院は処方の利便性に特化したクリニックのため、症状が下記の状態のように特に重く長引く場合は対面式の婦人科の受診をおすすめしています。婦人科ではまず病変がないか診察で確認し、原因が機能性か器質性かのどちらかを診断します。機能性月経困難症の場合、プロスタグランジン(痛みのもと)の合成を抑制する非ステロイド性抗炎症薬などの痛み止めや、子宮平滑筋の収縮を抑える鎮痙薬の処方などがされ、器質性月経困難症の場合それぞれの症状に対する治療に移行します。

機能性月経困難症

診察しても月経痛の原因に病的な異常が見当たらない場合は「機能性月経困難症」とよびます。出産前で子宮頸管(子宮の出口)が非常に細いままだと月経血を少しずつしか出せず、子宮が過度に収縮するので強い痛みがでますが、出産後は子宮頸管が広まるので症状が緩和されることがあります。また、体質的にプロスタグランジンの分泌が多い人などが痛みを強く感じることになります。出産前の比較的若い女性の強い月経痛はほとんどこれにあてはまります。この場合、通常は月経の1~2日目に痛みのピークがあり、引きつるような痛みが断続的におそいます。

器質性月経困難症

出産経験のある女性で、以前より月経痛や血量が増したり、血の塊が出たり、月経の前から痛みがある場合などは、診察のうえ子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症などの器質的な病気に伴う器質性月経困難症を疑います。

子宮内膜症は子宮以外の場所、卵巣、骨盤内など本来あってはならない場所に子宮内膜が増殖する病気です。病変した子宮内膜も正常のものと同じように月経時には出血とともに脱落しようとしますが行き場が見つからず、局所で強い痛みとともに腫れや炎症がおこります。

子宮腺筋症は子宮の筋層と呼ばれる部分に子宮内膜が増殖する病気です。病変した内膜も月経の時に出血とともに脱落しようとしますが行き場が見つからないため、子宮筋層の中で出血が起きて子宮が腫大します。腫大した子宮は収縮がうまく行われなくなるため、痛みと月経量が増加します。

子宮筋腫は良性腫瘤(筋肉のかたまり)が子宮筋層の中にできる病気です。子宮がこれによって厚く腫大します。腫大した子宮は収縮がうまく行われなくなるため、痛みと月経量が増加します。これらの場合、月経の4から5日前から痛みが始まって月経が終わるまで鈍い痛みが続きます。