ファボワールの禁忌:血管病変を伴う糖尿病患者
デソゲストレル・エチニルエストラジオール錠(ファボワール)の添付文書に記載されている禁忌「血管病変を伴う糖尿病患者(糖尿病性腎症、糖尿病網膜症等)」について、定義・病態・なぜOCが禁忌なのか・実臨床での判断基準を整理して解説します。
① この禁忌の結論(要点)
糖尿病により“すでに血管が傷んでいる状態”の患者に、血栓・血管障害リスクを高めるエストロゲンを投与してはいけない
これが添付文書の本質です。
② 「血管病変を伴う糖尿病」とは何か
● 単なる糖尿病ではない
この禁忌は「糖尿病がある=すべてNG」ではありません。糖尿病によって血管障害(合併症)がすでに生じている状態を指します。
● 糖尿病性血管障害の2分類
| 分類 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 細小血管障害 | 毛細血管レベルの障害 | 腎症・網膜症・神経障害 |
| 大血管障害 | 動脈硬化性病変 | 心筋梗塞・脳梗塞・PAD |
③ 添付文書に例示されている疾患の意味
① 糖尿病性腎症とは
● 定義
高血糖により腎臓の毛細血管(糸球体)が障害された状態。
● 該当する具体例
- 微量アルブミン尿が持続
- 顕性蛋白尿
- eGFR低下
- CKDと診断されている
初期(第2期)でも該当することがあります。
② 糖尿病網膜症とは
● 定義
網膜の毛細血管が障害され、出血・虚血・新生血管を生じる病態。
● 該当する具体例
- 単純網膜症
- 増殖前網膜症
- 増殖網膜症
- 眼科で「糖尿病性変化あり」と言われた場合
軽症でも「血管病変あり」
③ 「等(など)」に含まれるもの
添付文書の「等」には以下も含まれます。
- 糖尿病性神経障害(自律神経障害を含む)
- 末梢動脈疾患(足の血流障害)
- 糖尿病性心血管疾患
- 糖尿病性脳血管障害
④ なぜファボワールが禁忌なのか(病態生理)
● すでに糖尿病で起きていること
- 血管内皮障害
- 微小血栓形成
- 動脈硬化進行
- 血流障害
● エストロゲンを加えると
エチニルエストラジオールは:
- 凝固因子↑
- 抗凝固系↓
- 血小板凝集↑
「壊れた血管」+「血栓促進」= 重篤な血管イベントの危険
● 起こりうる重大事象
- 脳梗塞
- 心筋梗塞
- 網膜血管閉塞(失明)
- 腎機能急速悪化
これが絶対禁忌とされる理由です。
⑤ HbA1cが良好でも禁忌になるのか?
● 答え:なる場合がある
- HbA1cが良好でも
- 一度でも血管合併症が診断されていれば禁忌
現在の血糖コントロールの良し悪しは関係ありません
⑥ 禁忌に該当しない糖尿病患者との違い
● 原則使用可(医師慎重判断)
- 合併症なし
- 罹病期間が短い
- 血糖コントロール良好
- 非喫煙・非肥満
※ それでも「慎重投与」扱いになることが多い
⑦ 添付文書の「患者」の範囲(重要)
以下はすべて含まれます。
- 現在、腎症・網膜症がある
- 過去に診断されたことがある
- 軽症・初期でも指摘歴あり
- 糖尿病合併症として治療中
「治った」「軽い」は理由にならない
⑧ 該当患者に推奨される代替避妊法
- 黄体ホルモン単独避妊法
- 子宮内避妊具(IUD)
- バリア法
エストロゲンを含まない方法が原則
⑨ まとめ(要点)
- 血管病変を伴う糖尿病=禁忌
- 例:
- 糖尿病性腎症
- 糖尿病網膜症
- その他の糖尿病性血管障害
- 理由は血栓・虚血性イベントの致死的リスク
- 血糖が良好でも既往があれば不可







