ファボワールの禁忌:血栓性素因のある女性
経口避妊剤(デソゲストレル・エチニルエストラジオール錠〈ファボワール〉)の添付文書にある禁忌「血栓性素因のある女性」についての詳細解説です。
1. 「血栓性素因」とは何か
血栓性素因(thrombophilia)とは、通常よりも血液が固まりやすく、血栓(血のかたまり)を形成しやすい体質・病態を指します。ファボワールのようなエストロゲン含有経口避妊薬(COC)は、もともと血栓リスクを上昇させるため、血栓性素因を持つ女性では血栓症の発症リスクが著しく増大します。そのため「禁忌」とされています。
2. 血栓性素因に含まれる具体例(添付文書・臨床的解釈)
① 先天性(遺伝性)血栓性素因
生まれつき血液凝固系に異常があるタイプです。
代表例
- アンチトロンビン欠乏症
- プロテインC欠乏症
- プロテインS欠乏症
- 第Ⅴ因子Leiden変異(※日本人ではまれ)
- プロトロンビン遺伝子変異
特徴
- 若年で深部静脈血栓症を発症
- 家族に血栓症の既往があることが多い
- 妊娠・ピル・手術で急激にリスク上昇
診断がついている時点でファボワールは禁忌
② 後天性(獲得性)血栓性素因
抗リン脂質抗体症候群(APS)
- ループスアンチコアグラント
- 抗カルジオリピン抗体
- 抗β2GPI抗体
特徴
- 血栓症(静脈・動脈)
- 不育症・流産
- SLE(全身性エリテマトーデス)に合併しやすい
エストロゲン使用で血栓リスクが跳ね上がるため禁忌
③ 既往歴・臨床的に強く疑われるケース
以下も「血栓性素因がある女性」に実質的に含まれます。
- 若年(40歳未満)で原因不明の血栓症を起こした
- 妊娠・出産・ピル使用時に血栓症を起こした既往
- 繰り返す深部静脈血栓症・肺塞栓症
- 家族に血栓症が多発している
検査で確定していなくても「素因が疑われる場合」も慎重対応(原則避ける)
3. なぜファボワールが危険なのか(病態生理)
エストロゲンの作用
- 凝固因子(Ⅱ, Ⅶ, Ⅸ, Ⅹ)↑
- 抗凝固因子(プロテインS)↓
- 線溶系抑制
血液が「固まりやすい方向」に傾く
血栓性素因があると
体質的な凝固亢進 + エストロゲン = 血栓症リスクが指数関数的に上昇
4. 実際に問題となる血栓症
- 深部静脈血栓症(DVT)
- 肺塞栓症(PE)
- 脳梗塞
- 心筋梗塞(まれだが可能性あり)
⚠ 特に初回投与〜3か月以内に多い
5. 「血栓性素因のある女性」に該当するかの実務的判断
明確に該当(禁忌)
- 血栓性素因の診断が確定している
- APSと診断されている
- 血栓症の既往+誘因なし
原則避ける(慎重投与不可)
- 若年発症血栓の既往
- 家族歴が強い
- 不明原因の反復流産歴
6. 代替選択肢(重要)
血栓性素因がある場合:
- 黄体ホルモン単剤(POP)
- レボノルゲストレルIUS(ミレーナ)
- 銅付加IUD
- 非ホルモン避妊
エストロゲン非含有法が基本
まとめ(要点)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 血栓性素因 | 血栓ができやすい体質・病態 |
| 含まれる疾患 | AT欠乏、PC/PS欠乏、APSなど |
| なぜ禁忌 | エストロゲンで血栓リスク激増 |
| 実務判断 | 診断確定 or 強く疑えば使用不可 |
| 代替 | エストロゲンを含まない避妊法 |







