ファボワールの禁忌:前兆を伴う片頭痛の患者

デソゲストレル・エチニルエストラジオール錠(ファボワール)の添付文書に記載されている禁忌で「前兆(閃輝暗点、星型閃光等)を伴う片頭痛の患者」について、神経学的定義・なぜ禁忌か・実臨床での判定基準を整理して解説します。


① 「前兆を伴う片頭痛」とは

● 片頭痛は大きく2種類

分類 特徴
前兆のない片頭痛 頭痛のみ(拍動性・悪心など)
前兆を伴う片頭痛(Migraine with aura) 頭痛の前後に神経症状(前兆)が出現

禁忌なのは後者のみです。


② 添付文書にある「前兆」とは何か

● 視覚性前兆(最も典型)

以下はすべて前兆(aura)に該当します。

  • 閃輝暗点
    • 視野の一部がギザギザ光る
    • 光の輪・稲妻状の光
  • 星型閃光
    • 星が散るようなキラキラした光
  • 視野欠損(見えない部分が出る)
  • モザイク状・万華鏡様の視覚異常

※ 両眼で見えるのが特徴(眼疾患との鑑別点)


● 視覚以外の前兆(これも禁忌)

  • 片側のしびれ・感覚異常
  • 一時的な脱力
  • 言葉が出にくい(失語様症状)
  • めまい・ふらつき

これらが頭痛の前後に一過性に出る場合= 前兆を伴う片頭痛


③ 時間経過の特徴

前兆には典型的パターンがあります。

項目 特徴
出現 徐々に広がる
持続 5〜60分以内
回復 完全に消失
その後 片頭痛が続くことが多い

この時間的特徴があれば前兆ありと判断されます。


④ なぜ「前兆あり片頭痛」は禁忌なのか

● 最大の理由:脳梗塞リスク

前兆を伴う片頭痛の患者は:

  • もともと脳虚血・脳血管イベントのリスクが高い
  • 特に若年女性でも虚血性脳卒中リスクが有意に上昇

● OC(エストロゲン)を加えるとどうなるか

エチニルエストラジオールは:

  • 血液凝固促進
  • 血管内皮障害
  • 血栓形成リスク上昇

前兆あり片頭痛 × エストロゲン脳梗塞リスクが“相乗的に上昇”

そのため絶対禁忌とされています。


⑤ 「頻度が少ない」「昔だけ」でも該当するか?

● 答え:はい、該当します

以下はすべて禁忌に含まれます。

  • 年に1回でも前兆があった
  • 数年前に1度だけ経験
  • 最近は頭痛が軽い
  • 現在は頭痛がほぼない

既往歴がある時点で禁忌


⑥ これは「単なる目の疲れ」や「閃光」とどう違う?

● よくある誤解

  • 眼精疲労
  • ドライアイ
  • 立ちくらみのチカチカ

● 前兆の特徴

  • 両眼性
  • 視野の一部から始まり拡大
  • 時間が経つと自然に消える
  • その後頭痛が来ることが多い

不明な場合は神経内科的評価が必要


⑦ 添付文書の「患者」とはどこまで含むか

含まれるのは:

  • 現在、前兆を伴う片頭痛がある
  • 過去に診断された
  • 明確な前兆エピソードがある(診断名がなくても)

診断名の有無ではなく「症状の実態」で判断されます。


⑧ 該当する人に勧められる代替手段

  • 黄体ホルモン単独避妊法
    • デソゲストレル単剤
  • IUD(子宮内避妊具)
  • バリア法

エストロゲンを含まない方法


⑨ 要点

  • 前兆を伴う片頭痛=禁忌
  • 前兆とは:
    • 閃輝暗点
    • 星型閃光
    • 視野欠損
    • 一過性のしびれ・言語障害
  • 理由は
    虚血性脳卒中リスクの上昇
  • 過去に1回でもあれば該当
  • 低用量でも不可