トリキュラーの禁忌:抗リン脂質抗体症候群の患者

トリキュラー(レボノルゲストレル・エチニルエストラジオール)の禁忌のひとつ、抗リン脂質抗体症候群(Antiphospholipid Antibody Syndrome, APS)の患者について詳しく解説します。


 1. 抗リン脂質抗体症候群(APS)とは

抗リン脂質抗体症候群とは、血液中に抗リン脂質抗体(anticardiolipin抗体、β2-グリコプロテインI抗体、ループスアンチコアグラントなど)が存在し、血栓を作りやすくなる自己免疫疾患です。

  • 血液が異常に固まりやすくなる → 血栓症リスク増
  • 血栓は静脈・動脈の両方にできる可能性あり
  • 妊婦では流産や早産などの合併症リスクも増加

2. APSの特徴的リスク

リスク 説明
深部静脈血栓症(DVT) 下肢の静脈に血栓ができ、腫れ・痛み・熱感を伴う
肺塞栓症(PE) DVTが肺動脈に移動 → 呼吸困難、胸痛、失神
脳梗塞 動脈血栓による脳血管閉塞 → 麻痺・言語障害
心筋梗塞 冠動脈血栓 → 胸痛、心不全
妊娠合併症 流産・早産・胎児発育不全

3. なぜAPS患者にトリキュラーが禁忌なのか

トリキュラーにはエチニルエストラジオール(合成エストロゲン)が含まれます。

  • エストロゲンは凝固因子を増やし、抗凝固因子を減らす → 血液が固まりやすくなる
  • APSではもともと血栓リスクが高い状態
  • したがって、トリキュラーを服用すると:
    • 血栓が生じやすくなる
    • 静脈・動脈血栓症のリスクが飛躍的に上昇
    • 場合によっては致死的な血栓症を起こす可能性がある

4. 臨床上の注意点

  • APS患者は、経口エストロゲン製剤は絶対禁忌
  • 避妊のためには、非エストロゲン系の方法を選択
    • プロゲスチン単剤ピル(ミニピル)
    • 子宮内避妊具(IUD/IUS)
    • コンドーム
  • 妊娠希望の場合は、抗凝固療法との併用や産科管理が必要

5. まとめ表

項目 内容
禁忌対象 抗リン脂質抗体症候群(APS)の患者
禁忌理由 エストロゲンによる凝固亢進で血栓症リスクが飛躍的に増加
主なリスク DVT、肺塞栓、脳梗塞、心筋梗塞、妊娠合併症
医師対応 絶対禁忌。非エストロゲン系避妊法を選択