十全大補湯

■ 十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)とは

十全大補湯は、体力の低下や虚弱体質を改善する代表的な補剤(ほざい)の漢方薬です。名前の通り、「十種類の生薬を組み合わせて全身を補う」ことから「十全大補湯」と呼ばれます。もともとは、病後や産後の体力回復のために用いられてきた処方で、気と血の両方を補い、疲労・冷え・免疫力低下・貧血傾向などの改善に広く使われます。


■ 構成生薬(10種類)

生薬名 主な作用
人参(にんじん) 気を補い、全身のエネルギーを増強
白朮(びゃくじゅつ) 胃腸を整え、消化吸収力を高める
茯苓(ぶくりょう) 利水作用、むくみ改善、精神安定
甘草(かんぞう) 炎症抑制・薬全体の調和
当帰(とうき) 血を補い、貧血や冷えを改善
芍薬(しゃくやく) 筋肉の緊張を和らげ、痛みやこりを軽減
川芎(せんきゅう) 血の巡りを良くし、頭痛や肩こりを改善
熟地黄(じゅくじおう) 血と腎を補い、体力・精力を回復
朮(ほかの薬局方では同じく白朮) 胃腸を助ける(処方によって補助)
黄耆(おうぎ) 気を補い、免疫力・体力を増強

※処方によっては微妙に生薬名や配合量が変わることがありますが、基本は「気と血を同時に補う」構成です。


■ 効能・効果(日本薬局方などの記載)

  • 疲労・倦怠感
  • 食欲不振・消化不良
  • 貧血傾向・冷え性
  • 病後・産後の体力回復
  • 免疫力低下、虚弱体質

■ 適する体質と症状

状況 説明
疲れやすい 少し動いただけで体力が消耗する
冷え性 手足が冷たい、腰や下肢の冷えもある
貧血傾向 顔色が悪い、めまい、立ちくらみ
病後・産後 回復期で体力や血液量が不足している
虚弱体質 高齢者・慢性疲労・免疫力低下

「気虚+血虚」の両方を補う、全身を元気にする万能補剤です。


■ 現代的な臨床応用

  • 病後・手術後・産後の体力回復
  • 慢性疲労・免疫力低下の改善
  • 冷え性・貧血・倦怠感の改善
  • 高齢者の虚弱体質改善やQOL向上

■ 注意点

  • 体力が十分にある人や熱感が強い人には向かない
  • 長期服用で便秘やのぼせが出る場合がある
  • 高血圧や心疾患がある場合は医師管理下での服用

■ 類似処方との比較

処方名 主な特徴 体質傾向
十全大補湯 気と血を同時に補い、全身を元気にする 疲労・貧血・冷え・病後回復
補中益気湯 気を補い、中焦(消化器系)を強化 疲れやすい・食欲不振・虚弱体質
人参養栄湯 気と血を補い、体力増強 高齢者・病後回復期に最適
当帰芍薬散 血を補い、冷え・月経不順・むくみ改善 女性の血虚タイプ

■ まとめ

  • 十全大補湯は「気と血を同時に補い、全身の体力と免疫力を回復させる漢方薬」。
  • 病後・産後の回復、慢性疲労、虚弱体質、冷え性・貧血に幅広く用いられる。
  • 「全身の元気を取り戻す万能補剤」として、最も基本的な補剤の一つです。