当帰芍薬散

■ 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)とは

当帰芍薬散は、古くから女性の体質改善に用いられてきた漢方薬で、主に「冷え性」「月経不順」「更年期障害」「不妊症」など、血(けつ)と水(すい)の巡りが悪い体質を整える目的で使われます。出典は中国の古典『金匱要略(きんきようりゃく)』に記される処方で、日本では江戸時代以降、婦人薬として広く用いられてきました。


■ 構成生薬(6種類)

生薬名 主な作用
当帰(とうき) 血を補い、血行を促進して冷えを改善
芍薬(しゃくやく) 筋肉のこわばりを和らげ、痛みを鎮める
川芎(せんきゅう) 血の巡りをよくし、頭痛や肩こりを改善
蒼朮(そうじゅつ) 余分な水分を除き、むくみを改善
茯苓(ぶくりょう) 利尿作用で水分代謝を整える
沢瀉(たくしゃ) 体内の水の滞りを取り除く

この6つの生薬が「血行を整える」「水分バランスを改善する」という2つの方向から、体全体のバランスを整えます。


■ 効能・効果(日本薬局方などの記載)

  • 冷え性
  • 月経不順・月経困難症
  • 更年期障害
  • 肩こり
  • めまい
  • むくみ
  • 貧血傾向
  • 疲れやすい体質の改善

■ 体質的特徴(向いている人)

  • 体力があまりない(虚弱体質)
  • 顔色が悪い・貧血気味
  • 手足が冷える
  • むくみやすい
  • 月経不順や月経痛がある
  • 頭重感やめまいがある

いわゆる「血虚(けっきょ)+水滞(すいたい)」タイプの女性に適しています。


■ 現代的な臨床応用

  • 婦人科領域では、不妊症の体質改善や更年期症状の緩和に処方されることが多く、
    一部の研究では排卵機能や子宮内膜環境の改善作用も報告されています。
  • また、近年では男性の不妊症や冷え、むくみ体質にも応用されるケースもあります。

■ 注意点

  • 体力があり、のぼせやすく、赤ら顔のタイプには合わないことがあります。
  • 長期服用する場合は、医師や薬剤師に相談しながら継続するのが望ましいです。