補中益気湯

■ 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)とは

補中益気湯は、体力が低下している人の元気を回復させる漢方薬です。「中(消化器系)」を補い、気(エネルギー)を増やすことで、疲れやすい、食欲がない、下痢しやすいなどの症状を改善します。古典『和剤局方』に記載される処方で、「気虚(ききょ)」に伴う全身の倦怠感や消化器症状に用いられます。

■ 構成生薬(12種類)

生薬名 主な作用
人参(にんじん) 気を補い、全身のエネルギーを増強
黄耆(おうぎ) 気を補い、免疫力・体力を増強
白朮(びゃくじゅつ) 胃腸を整え、水分代謝を改善
茯苓(ぶくりょう) 水分代謝を整え、むくみ改善、精神安定
甘草(かんぞう) 炎症抑制・薬全体の調和
当帰(とうき) 血を補い、全身の疲労回復を助ける
升麻(しょうま) 中焦(消化器系)を持ち上げ、体力回復
柴胡(さいこ) 気の巡りを改善し、倦怠感やのぼせを和らげる
川穹(せんきゅう) 血行改善、肩こりや頭痛の緩和
黄柏(おうばく) 余分な熱を取り、消化器症状を整える
附子(ぶし) 体を温め、冷えによる倦怠感を改善
甘草(かんぞう) (調和・炎症抑制、既述)

※処方によって生薬の種類や配合量に若干の差があります。中心は気を補う人参・黄耆と、消化器系を整える白朮・茯苓です。


■ 効能・効果(日本薬局方などの記載)

  • 疲労・倦怠感
  • 食欲不振・胃腸虚弱
  • 下痢・軟便
  • 虚弱体質による風邪をひきやすい状態
  • 貧血傾向・冷え性

■ 適する体質の特徴

状況 説明
疲れやすい 少し動いただけで疲れる
食欲がない 胃腸が弱く、消化不良気味
下痢しやすい 水分代謝の乱れから軟便になりやすい
冷え性 手足や腰が冷える
虚弱体質 高齢者・体力低下・病後回復期の人向き

中焦(消化器系)と気が不足した虚弱体質」に最適な処方です。


■ 現代的な臨床応用

  • 慢性疲労・病後回復期の体力増強
  • 胃腸虚弱による食欲不振・下痢
  • 更年期障害の倦怠感・冷え
  • 術後・抗がん剤治療後の体力回復補助
  • 高齢者の体力維持や免疫力向上

■ 注意点

  • 体力が十分にある人、熱がこもりやすいタイプには合わない
  • 長期服用は体力が過剰になる場合もある
  • 心疾患や高血圧、浮腫のある方は医師管理下で使用

■ 類似処方との比較

処方名 主な特徴 体質傾向
補中益気湯 気を補い、中焦(消化器)を強化 疲れやすい・食欲不振・虚弱体質
人参養栄湯 気と血を補い、体力増強 高齢者・病後回復期に最適
八味地黄丸 腎陽虚・冷え・腰痛・頻尿 中高年・冷えや下半身の弱さ
当帰芍薬散 血を補い、冷え・月経不順・むくみ改善 女性の虚弱体質・血虚タイプ

■ まとめ

🔹 補中益気湯は「気を補い、胃腸と体力を回復させる漢方薬」。
🔹 疲労、食欲不振、下痢、虚弱体質の改善に幅広く使用される。
🔹 病後回復期や高齢者の体力増強、免疫力向上にも適した基本処方の一つ。