■ 五苓散(ごれいさん)とは
五苓散は、体内の水分代謝の異常を改善することを目的とした漢方薬です。「体内の水が滞ることによるむくみ・吐き気・頭重感・下痢」などの症状に幅広く使われます。出典は中国の古典『傷寒論(しょうかんろん)』で、古くから「水の滞りによる症状」に適応する処方として知られています。現代では急性の水分異常(むくみ、吐き気、二日酔い、乗り物酔い)にも応用されます。
■ 構成生薬(5種類)
| 生薬名 |
主な作用 |
| 猪苓(ちょれい) |
利尿作用、水分代謝を改善 |
| 茯苓(ぶくりょう) |
利尿作用、むくみや下痢を改善 |
| 澤瀉(たくしゃ) |
余分な水分を排出、むくみ改善 |
| 桂枝(けいし) |
体を温め、血行促進、冷えによる水滞改善 |
| 白朮(びゃくじゅつ) |
胃腸を整え、消化を助ける、湿気除去 |
■ 効能・効果(日本薬局方などの記載)
- むくみ(浮腫)
- 水毒による頭重感、めまい
- 下痢・吐き気
- 二日酔い・悪酔い
- 乗り物酔い(車酔い・船酔い)
- 小児の嘔吐・下痢
■ 適する体質と症状
| 状況 |
説明 |
| むくみ・だるさ |
足や手がむくみやすく、重だるい |
| 頭重・めまい |
頭が重く、ぼんやりした感じ |
| 消化器症状 |
嘔吐・下痢・食欲不振がある |
| 二日酔い・乗り物酔い |
胃のむかつき、吐き気がある |
| 体質 |
やや体力があるが、水分代謝が滞りやすいタイプ |
■ 現代的な臨床応用
- 急性のむくみ・吐き気・頭重感に即効性がある
- 二日酔い・悪酔いに服用すると症状を和らげる
- 乗り物酔い(車酔い・船酔い)の予防・改善
- 腎臓や心臓の軽度むくみへの補助的使用(医師管理下)
■ 注意点
- 強い利尿作用があるため、脱水や低血圧の方は注意
- 長期連用よりも、症状がある時に短期間使用することが基本
- 高齢者や虚弱体質では慎重に服用
■ 類似処方との比較
| 処方名 |
主な対象 |
特徴 |
| 五苓散 |
むくみ・二日酔い・吐き気 |
水分代謝を整える即効性漢方 |
| 猪苓湯 |
浮腫・腎臓由来の水毒 |
腎臓病由来のむくみに適応 |
| 茵蔯蒿湯 |
黄疸・肝胆系水毒 |
肝胆系の湿熱に対応 |
| 葛根湯 |
風邪の初期・肩こり |
水滞よりも寒邪排出が主体 |
■ まとめ
- 五苓散は「体内の水分代謝異常によるむくみ・吐き気・頭重感」を改善する漢方薬。
- 二日酔い、乗り物酔い、急性の浮腫や下痢に即効性がある。
- 水分の滞りが原因となる症状に特化しており、短期間の使用に向いている。