加味逍遙散

■ 加味逍遙散(かみしょうようさん)とは

加味逍遙散は、ストレスやホルモンバランスの乱れからくるイライラ・のぼせ・不眠・月経不順などを改善する漢方薬です。
元は女性の更年期障害やPMS(月経前症候群)などによく使われる処方ですが、感情の起伏が激しい・ストレスが多い現代人全般にも適応されます。

出典は中国の古典『和剤局方(わざいきょくほう)』で、「逍遙散(しょうようさん)」に牡丹皮(ぼたんぴ)山梔子(さんしし)を加えたことから「加味逍遙散」と呼ばれます。


■ 構成生薬(10種類)

生薬名 主な作用
当帰(とうき) 血を補い、血行を促進して冷えを改善
芍薬(しゃくやく) 筋肉の緊張を緩め、痛みを鎮める
川芎(せんきゅう) 血の巡りをよくし、頭痛や肩こりを改善
茯苓(ぶくりょう) 利尿作用・精神安定作用
蒼朮(そうじゅつ) 余分な水分を除き、体を温める
柴胡(さいこ) 自律神経のバランスを整え、ストレスを和らげる
牡丹皮(ぼたんぴ) 血の滞りを除き、のぼせ・イライラを鎮める
山梔子(さんしし) 体の熱を冷まし、怒り・不眠を抑える
生姜(しょうきょう) 胃腸を温め、薬の吸収を助ける
薄荷(はっか) 気の巡りをよくし、頭をすっきりさせる

■ 効能・効果(日本薬局方などの記載)

  • 更年期障害
  • 月経不順
  • 月経前症候群(PMS)
  • 神経症
  • 不眠・不安
  • 肩こり・頭痛・のぼせ・発汗異常

■ 適する体質の特徴

  • 体力は中程度(虚弱でも壮健でもない)
  • ストレスや緊張でイライラ・怒りっぽい
  • 顔がほてる、のぼせやすい
  • 頭痛や肩こり、不眠がある
  • 月経前に気分の浮き沈みがある
  • 胸のつかえ感、食欲不振がある

このような、「気滞(きたい)+血虚(けっきょ)+少しの熱(鬱熱)」タイプに用いられます。


■ 現代的な臨床応用

  • 更年期障害の第一選択薬の一つとして広く使用。
  • PMS(月経前症候群)自律神経失調症抑うつ状態不安・不眠などにも有効とされます。
  • ストレス性の胃腸症状や肌荒れに使われることもあります。

■ 当帰芍薬散との違い(比較)

比較項目 当帰芍薬散 加味逍遙散
主な作用 血と水の巡りを整える 気と血の巡りを整える
主な症状 冷え・むくみ・貧血傾向 イライラ・のぼせ・ストレス
体力タイプ やや虚弱(冷え性体質) 中程度(ストレス体質)
対応疾患 月経不順・不妊・更年期・冷え 更年期・PMS・自律神経失調・情緒不安定

■ 注意点

  • 体力が弱すぎる人、冷えが強い人には合わないことがあります。
  • 長期服用する場合は、肝機能に注意(まれに肝障害の報告があります)。