抑肝散

■ 抑肝散(よくかんさん)とは

抑肝散は、精神的緊張や神経の高ぶり、イライラや興奮を和らげる漢方薬です。古典『万病回春』に由来し、もともとは子どもの夜泣きやかんしゃく、成人の神経過敏や不眠の改善に用いられました。名前の「抑肝」は「肝の気を抑える」という意味で、肝の気の高ぶりを鎮め、精神を安定させる作用を示しています。現代では、高齢者の認知症に伴う易怒・興奮・不眠にも応用されることがあります。


■ 構成生薬(7種類)

生薬名 主な作用
柴胡(さいこ) 気の巡りを整え、イライラや興奮を鎮める
蒼朮(そうじゅつ) 胃腸を整え、湿気を除く(消化を助ける)
茯苓(ぶくりょう) 利水・鎮静作用、精神安定
甘草(かんぞう) 薬の調和、炎症抑制
当帰(とうき) 血を補い、神経の安定を助ける
芍薬(しゃくやく) 筋肉の緊張や痛みを和らげ、精神を落ち着ける
陳皮(ちんぴ) 気の巡りを改善し、胃腸の調子を整える

ポイント:肝の高ぶりを鎮めつつ、気血のバランスを整える処方です。


■ 効能・効果(日本薬局方などの記載)

  • 神経過敏・イライラ・怒りやすい
  • 不眠・落ち着かない
  • 小児の夜泣き・かんしゃく
  • 高齢者の認知症に伴う易怒・興奮
  • 体の緊張やこわばり

■ 適する体質と症状

状況 説明
神経過敏 些細なことで怒ったりイライラしやすい
不眠・寝つきが悪い 興奮状態で眠れない、夜中に目が覚める
高齢者の易怒 認知症に伴う攻撃性や興奮がある
体質 虚弱~普通体力で、肝の気が高ぶりやすいタイプ

■ 現代的な臨床応用

  • 子どもの夜泣き・かんしゃく
  • ストレスや精神的緊張によるイライラ
  • 高齢者の認知症に伴う興奮・易怒・不眠
  • 神経過敏による胃腸不調の改善(気の巡りを整える作用による)

■ 注意点

  • 強い虚弱体質や慢性疾患で体力が極端にない場合は、慎重に使用
  • 長期服用でまれに下痢や胃部不快感が出ることがある
  • 興奮や怒り以外の精神疾患(うつ病や統合失調症など)は、医師の管理下で使用

■ 類似処方との比較

処方名 主な特徴 体質傾向
抑肝散 肝の気の高ぶりを鎮め、イライラ・興奮・不眠改善 神経過敏・易怒タイプ
加味逍遙散 血を補いつつ肝の気を整え、イライラ・のぼせ改善 女性の更年期・PMSタイプ
半夏厚朴湯 喉の違和感やストレスによる緊張を和らげる 精神的緊張・ストレス型胃腸不調

■ まとめ

抑肝散は「肝の気の高ぶりを鎮める漢方薬」。
子どもの夜泣き・かんしゃく、高齢者の易怒・興奮、不眠などに用いられる。
精神的緊張や神経過敏を落ち着け、体の気血バランスも整える処方です。