レボノルゲストレルの分子レベルでの作用

レボノルゲストレル(LNG)の分子レベルでの作用を詳しく整理します。これは、排卵抑制や緊急避妊の仕組みを理解するうえで非常に重要です。


① 標的受容体

レボノルゲストレルはプロゲステロン受容体(PR)に結合します。

  • PRは核内受容体で、リガンド結合型転写因子
  • 結合すると遺伝子発現を調節
  • 主に下垂体と卵巣で作用

② 下垂体での作用

正常のLH分泌

  1. GnRH(視床下部)刺激 → 下垂体前葉
  2. LH・FSH分泌 → 卵胞成熟・排卵

LNGの分子作用

  • PR活性化 → 下垂体でGnRH刺激応答を抑制
  • LHサージ抑制
  • 結果として排卵が起こらない

要点:
LNGはLH分泌の「量的スイッチ」を下げる薬であり、LHサージ前でないと効果が弱い


③ 卵巣での作用

  • 卵胞顆粒膜細胞のPR活性化
  • ステロイド合成酵素(CYP11A1, CYP17A1)発現調節
  • プロゲステロン産生増加(生理的フィードバック)

しかし排卵直前では、卵胞内の分子カスケードがすでに進行しているため、LNG単独では排卵を止められない


④ 子宮内膜での作用

LNGは子宮内膜にも作用:

  • 子宮内膜のプロゲステロン依存遺伝子を変化
  • 栄養層(機能層)の成熟抑制
  • 受精卵の着床環境をわずかに不利にする

⚠ ただし主作用は排卵抑制で、着床阻止作用は二次的・補助的


⑤ 頸管粘液での作用

  • PR活性化により粘液分泌量・粘度が増加
  • 精子通過を物理的に阻害

⑥ 分子カスケードまとめ(排卵抑制メイン)

LNG → PR活性化(下垂体) → GnRH応答低下 → LHサージ抑制 → 排卵阻止

排卵直後になると:

LHサージ → cAMP-PKA → PR依存性卵胞破裂 → 排卵

ここではLNGは効果が弱い


⑦ 特徴まとめ

  • 主作用は下垂体PRによるLHサージ抑制
  • 卵巣・子宮内膜・頸管にも副次的作用
  • LHサージ後の排卵阻止は困難
  • 分子レベルでは「遺伝子転写調節によるホルモン制御薬」