ファボワールの禁忌:エストロゲン依存性悪性腫瘍、子宮頸癌及びその疑いのある患者

デソゲストレル・エチニルエストラジオール錠(ファボワール)の添付文書に記載されている禁忌「エストロゲン依存性悪性腫瘍(例:乳癌、子宮内膜癌)、子宮頸癌及びその疑いのある患者」について、詳しく解説します。


① エストロゲン依存性悪性腫瘍とは何か

● 定義

エストロゲン依存性悪性腫瘍とは、エストロゲン(女性ホルモン)によって腫瘍の増殖が促進される性質をもつ癌を指します。

ファボワールは エチニルエストラジオール(合成エストロゲン) を含むため、これらの腫瘍が存在すると 癌の進行を助長するリスク があるため禁忌とされています。


● 代表例①:乳癌(乳がん)

なぜ禁忌か

  • 多くの乳癌はエストロゲン受容体(ER)陽性
  • エストロゲン刺激 →
    癌細胞の増殖シグナルが活性化

添付文書での対象者

以下はすべて禁忌に該当します:

  • 現在、乳癌と診断されている
  • 過去に乳癌の既往がある(治療後含む)
  • 乳癌が強く疑われる状態
    • 触知できるしこり
    • 画像検査で悪性疑い
    • 病理未確定だが精査中

※「治療が終わっているから大丈夫」ではありません
既往歴がある時点で原則禁忌


● 代表例②:子宮内膜癌

なぜ禁忌か

  • 子宮内膜は エストロゲンにより増殖
  • エストロゲン単独刺激は内膜癌の発生・進展因子

特に問題となるケース

  • 不正出血がある
  • 内膜肥厚が指摘されている
  • 内膜癌が疑われ、組織診未実施

これらは 「疑いのある患者」 に含まれ、禁忌となります。


② 子宮頸癌及びその疑いのある患者とは

● 子宮頸癌が禁忌とされる理由

子宮頸癌は:

  • エストロゲン依存性ではない癌が多い
    (HPVが主因)

しかし、

  • 進行癌ではホルモン環境の変化が病態に影響する可能性
  • 不正出血などの症状がOCによってマスキングされる
  • 悪性腫瘍が未評価のままホルモン投与されること自体が不適切

このため、明確に禁忌とされています。


● 「子宮頸癌の疑い」とは何を指すか

以下は すべて禁忌に含まれます

  • 子宮頸部細胞診で
    • HSIL
    • ASC-H
    • SCC疑い
  • 精密検査(コルポ・組織診)待ち
  • HPV高リスク型陽性で異形成精査中
  • 原因不明の不正性器出血がある

「まだ確定診断ではない」段階でもアウト


③ なぜ「疑い」段階でも禁忌なのか

理由は3つあります。

① 癌の進行リスク

  • エストロゲン補充が潜在的な癌増殖を助長する可能性

② 診断遅延

  • 出血や月経異常がOCによって抑えられ、発見が遅れる

③ 治療方針の妨げ

  • 癌治療(手術・化学療法・放射線)ではホルモン投与が原則避けられる

④ 添付文書の「禁忌」の正確な読み方(重要)

この記載は、次を意味します:

「現在確定している患者」だけでなく
「否定できていない患者」も含めて投与不可

つまり、

状態 投与
癌と診断済み 禁忌
精査中・疑い 禁忌
完治後の既往 原則禁忌
明確に否定済み 医師判断で可

⑤ 実臨床での判断フロー(簡略)

  1. 不正出血・異常所見あり
  2. 悪性腫瘍が否定できない
  3. ファボワールは開始しない
  4. 精査・診断確定
  5. 問題なければ再検討

⑥ まとめ(要点)

  • エストロゲン依存性悪性腫瘍
    → エストロゲンで増殖する癌(乳癌・子宮内膜癌)
  • 子宮頸癌
    → ホルモン依存性でなくても禁忌
  • 「疑い」段階でも禁忌
  • 理由は
    癌進行・診断遅延・治療妨害の回避