ファボワールの禁忌:耳硬化症の患者

経口避妊剤 デソゲストレル・エチニルエストラジオール錠(ファボワール)添付文書の禁忌「耳硬化症の患者」について、疾患の定義・なぜ禁忌なのか・具体的に該当する患者像・実務的判断を整理して解説します。


1. 耳硬化症とは何か

耳硬化症(otosclerosis)とは、中耳(特にアブミ骨周囲)の骨代謝が異常となり、アブミ骨が固着して音の伝導が障害される疾患です。

主な特徴

  • 若年〜中年女性に多い
  • 進行性の伝音難聴
  • 両側性が多い
  • 妊娠・ホルモン変化で悪化することがある

2. なぜ耳硬化症の患者はファボワールが禁忌なのか

結論

エストロゲンが耳硬化症の進行を促進する可能性があるためです。


3. 病態生理とエストロゲンの関係

① 耳硬化症の病態

  • アブミ骨周囲で
    • 異常な骨吸収と骨形成が繰り返される
  • 骨が硬化・肥厚し、アブミ骨の可動性が低下

② エストロゲンの影響(重要)

エストロゲンには:

  • 骨代謝を活性化する作用
  • 骨リモデリングを促進する作用
  • 血流・局所炎症への影響

があり、これが:

  • 耳硬化症病変部の骨代謝を刺激
  • 病変の進行を早める可能性

実際に

  • 妊娠中
  • エストロゲン含有ピル使用中

難聴が進行した報告があります。


4. 添付文書で想定される「耳硬化症の患者」とは

明確に該当(禁忌)

  • 耳鼻科で耳硬化症と診断されている患者
  • 進行性の伝音難聴がある
  • 既に聴力低下が進行中または過去に進行した既往がある

実務上、同等に扱うケース

  • 妊娠やホルモン治療で難聴が悪化した既往
  • 耳硬化症が疑われ、精査・経過観察中
  • 両側性の原因不明な進行性伝音難聴

確定診断がなくても疑われる場合は原則避ける


5. 「耳硬化症=すべて禁忌」なのか?

ポイント

  • 活動性・進行性が問題
  • すでに手術(アブミ骨手術)を行い、
    • 病勢が安定
    • 聴力が長期安定

であっても、添付文書上は禁忌扱いが基本です。エストロゲン非含有避妊法が推奨。


6. なぜ他の禁忌と比べて「珍しい項目」なのか

  • 耳硬化症は頻度が低い
  • しかし
    • 若年女性に多い
    • ホルモン影響が示唆されている

ため、COC特有の禁忌として残っている項目です。


7. 耳硬化症患者の代替避妊法

原則

エストロゲンを含まない方法

選択肢

  • 黄体ホルモン単剤(POP)
  • レボノルゲストレルIUS(ミレーナ)
  • 銅付加IUD
  • バリア法

ホルモン変動の影響を最小限に


8. まとめ(要点)

項目 内容
耳硬化症 アブミ骨の骨代謝異常による難聴
なぜ禁忌 エストロゲンで病勢進行の恐れ
該当患者 診断確定例・進行例・疑い例
実務判断 原則COCは使用しない
代替 非エストロゲン避妊法