ファボワールの禁忌:脂質代謝異常のある患者

経口避妊剤 デソゲストレル・エチニルエストラジオール錠(ファボワール)添付文書の禁忌「脂質代謝異常のある患者」について、定義・具体例・禁忌となる理由・判断基準を整理して解説します。


1. 「脂質代謝異常」とは何か(総論)

脂質代謝異常(脂質異常症)とは、血中の脂質(コレステロールや中性脂肪)が病的に異常な状態を指します。ファボワールのようなエストロゲン含有経口避妊薬(COC)は脂質代謝に影響を与えるため、重度または特定型の脂質異常症では重篤な合併症(血栓症・膵炎・動脈硬化)を誘発するおそれがあります。そのため「禁忌」とされています。


2. 禁忌に該当する「脂質代謝異常」の具体像

① 高トリグリセリド血症(最重要)

最も問題となるタイプ

該当する患者

  • 中性脂肪(TG)が著明に高値
    • 目安:500 mg/dL以上
    • 特に 1,000 mg/dL以上 は高リスク
  • 家族性高トリグリセリド血症
  • 既往に 高TGによる急性膵炎

なぜ危険か

  • エストロゲンは TGをさらに上昇させる
  • **急性膵炎(致死的)**を引き起こす可能性

TG高値はファボワール禁忌の代表例


② 重度の高LDLコレステロール血症

該当する患者

  • 家族性高コレステロール血症(FH)
  • LDLが高度上昇し、治療中または未治療
  • 若年から動脈硬化性疾患リスクが高い

問題点

  • エストロゲンによる脂質変動
  • 動脈血栓(脳梗塞・心筋梗塞)リスク増加

③ 脂質異常+他の危険因子を合併している患者

以下を複数合併する場合は特に問題になります:

  • 脂質代謝異常
  • 喫煙
  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 肥満
  • 35歳以上

添付文書では「脂質代謝異常そのもの」+「血栓リスク増強」という組み合わせを想定


④ 脂質代謝異常による合併症を有する患者

  • 動脈硬化性疾患の既往
  • 虚血性心疾患
  • 脳血管障害
  • 末梢動脈疾患

これらがあればCOCは原則使用不可


3. なぜファボワールは脂質代謝異常で禁忌なのか

① エストロゲンの脂質への影響

項目 影響
中性脂肪(TG) ↑ 上昇しやすい
HDL ↑(一見良いが総合リスクは下がらない)
LDL 変動あり(個人差大)

特に TG上昇作用が臨床的に問題


② 血栓・動脈硬化リスク増大

  • 脂質異常 → 動脈硬化進行
  • COC → 凝固系活性化

動脈・静脈血栓の両方が問題


③ 急性膵炎のリスク

高TG
+
エストロゲン
=
急性膵炎

➡ 重症例では ICU管理・死亡例あり


4. 添付文書上の「脂質代謝異常」の実務的解釈

明確に禁忌

  • TGが高度上昇(特に500 mg/dL以上)
  • 高TGによる膵炎既往
  • 家族性脂質異常症(重症)
  • 脂質異常+血栓性疾患既往

原則避ける(慎重投与不可)

  • 治療抵抗性の脂質異常
  • 他の動脈硬化リスクを複数合併

使用可能となる可能性

  • 軽度脂質異常
  • 薬物治療で十分にコントロールされている

※医師によるリスク評価が前提


5. 脂質代謝異常患者の代替避妊法

原則

エストロゲン非含有

選択肢

  • 黄体ホルモン単剤(POP)
  • レボノルゲストレルIUS(ミレーナ)
  • 銅付加IUD
  • バリア法

特に高TG例ではCOCは避ける


6. まとめ(要点)

項目 内容
脂質代謝異常 TG・LDLなどの病的異常
最重要 高トリグリセリド血症
なぜ禁忌 TG上昇・血栓・膵炎
判断 重症度+合併リスクで評価
代替 非エストロゲン避妊法