マーベロンの禁忌: 耳硬化症の患者
「マーベロン(デソゲストレル/エチニルエストラジオール)の禁忌にある耳硬化症(otosclerosis)の患者」 が何を意味するのか、なぜ禁忌になるのかを詳しく解説します。添付文書の文章をそのまま読むだけでは分かりにくい部分を整理して説明します。
■禁忌の原文
耳硬化症の患者[症状が増悪することがある。]
■まず「耳硬化症」とは何か
●耳硬化症(otosclerosis)とは?
中耳の アブミ骨(stapes) 付近の骨が異常増殖・硬化することで、耳小骨の可動性が低下し、伝音性難聴を起こす疾患です。
特徴:
- 遺伝性の関与が強い(常染色体優性)
- 両側性が多い
- 若い女性に多い
- 進行性に難聴が進む
- 手術(アブミ骨手術)で改善可能
症状:
- 難聴(特に低音が聞こえにくい)
- 耳鳴り
- 自声強調(自声が響く)
- めまいは少ない
■なぜ「女性」「妊娠」「ホルモン」が関係するのか
耳硬化症は 女性ホルモン(特にエストロゲン・プロゲステロン)に影響を受ける病態と考えられています。
●臨床観察で知られる特徴
- 初発が 妊娠・出産期に多い
- 妊娠中に難聴が急速に進行することがある
- 月経周期で難聴変化を訴える例がある
- 女性で有病率が極端に高い(男性の約2倍)
これは エストロゲンが耳硬化症の骨代謝を増加させる可能性があるためと考えられています。
■マーベロンが禁忌となる理由
マーベロンは エストロゲン(エチニルエストラジオール) を含む複合ホルモン剤です。このエストロゲンが耳硬化症に影響を与え、症状が増悪する可能性があるため、添付文書で禁忌と明記されています。
●考えられている作用メカニズム(医学的背景)
- 耳硬化症は 骨代謝異常(耳小骨の骨化)
- エストロゲンは 骨代謝を活性化
- さらに 内耳の血液循環や局所ホルモン受容体に作用する可能性
- その結果、骨硬化が進行 → 難聴悪化
実際に「妊娠で悪化する」という臨床所見は、エストロゲン作用との関連を示唆しています。
■症状が「増悪する」とは具体的に何が起きる?
予想される症状の悪化:
- 難聴の進行が早まる
- 耳鳴りが強くなる
- 聞こえが急激に低下する
- 周波数特異的な聴力低下
- 両側進行のリスク上昇
耳硬化症は自然経過でも進行する病気ですが、ホルモンの影響が加わると、通常より早く悪化する可能性があるという懸念があるため禁忌になっています。
■添付文書が「禁忌」とした理由
耳硬化症とホルモン剤に関しては以下の理由から 慎重を通り越して禁止の扱い:
- 妊娠に伴う悪化との強い臨床的関連
- エストロゲン補充で悪化した報告が存在する
- 可逆性が低い(聴力障害は元に戻らないことがある)
- 内耳は「閉鎖空間」で、一度進行すると治療困難
- 医薬品による利益(避妊)よりもリスク(聴覚障害)が大きい場合がある
そのため「安全側に倒した禁忌」と考えるべきです。
■では、耳硬化症の治療歴がある人は?
●重要なポイント
- 過去に耳硬化症を手術した人(アブミ骨手術)でも原則禁忌
- 理由:残存病変や新たな骨硬化が起きる可能性があるため
ただし、耳硬化症の診断が曖昧な場合や軽症など、個別判断が可能な領域もありますが、基本は 避妊薬としては推奨されません。
■耳硬化症の人はどの避妊が安全か?
代替となる避妊方法は以下が考えられます:
●ホルモンを含まない方法
- IUD(銅付加子宮内避妊具)
- バリア法(コンドーム)
- 避妊手術
- 精子不活化剤など
●プロゲスチン単剤ピル(POPs)
「ミニピル」など エストロゲンを含まない薬は、安全性が比較的高いです。ただし、データは少ないため、医師との相談が望まれます。
■まとめ
●耳硬化症の患者とは?
- アブミ骨の硬化による進行性の伝音性難聴を有する人
- 診断確定例、治療歴(手術歴)ある例も含む
●禁忌の理由は?
- エストロゲンが耳硬化症を進行させ、難聴を悪化させる可能性があるため
- 妊娠やホルモン補充療法で悪化する臨床報告がある
●症状が「増悪する」とは?
- 難聴の進行加速
- 耳鳴り増悪
- 聴力低下が戻らない可能性
●代替方法
- 銅IUDなどエストロゲンを含まない避妊法
- プロゲスチン単剤療法(慎重に評価)








