デヒドロエピアンドロステロン（Dehydroepiandrosterone, 略称 DHEA）とは、副腎皮質（主に網状層）から分泌されるステロイドホルモンの一種で、男性ホルモン（アンドロゲン）や女性ホルモン（エストロゲン）の前駆体（原料）となる物質です。
DHEAは「ホルモンの母」「若返りホルモン」とも呼ばれ、思春期に急増し、20〜25歳前後でピークを迎え、その後は年齢とともに減少します。
分泌のしくみ
- 分泌源：副腎皮質（網状層）
- 調節：脳の下垂体前葉から分泌される ACTH（副腎皮質刺激ホルモン） により分泌が促される。
- 血中では、主にDHEA硫酸塩（DHEA-S）として存在（安定型で長く作用）。
生合成と変換の流れ（ホルモンの前駆体として）
コレステロール
↓
プレグネノロン
↓
17-ヒドロキシプレグネノロン
↓
DHEA
↓
├→ アンドロステンジオン
│ └→ テストステロン（男性ホルモン）
│ └→ ジヒドロテストステロン（DHT）
└→ エストロン（女性ホルモン）
└→ エストラジオール（E2）
DHEAは、体内で必要に応じて男性・女性ホルモンに変換される「ホルモンのもと」です。
主な働き（生理作用）
| 分類 |
働き・効果 |
補足 |
| ホルモン前駆体作用 |
アンドロゲン・エストロゲンの原料 |
性ホルモンのバランス維持 |
| 筋肉・骨代謝促進 |
タンパク質合成促進、骨密度維持 |
加齢による筋力低下の抑制に関与 |
| 抗ストレス作用 |
コルチゾールの過剰分泌を抑制 |
副腎疲労の軽減効果も示唆 |
| 抗動脈硬化作用 |
脂質代謝の改善、HDL上昇 |
心血管リスクを減らす可能性 |
| 免疫調整作用 |
免疫細胞（T細胞など）の活性化 |
加齢性免疫低下の予防 |
| 気分・記憶改善作用 |
セロトニンやドーパミンに影響 |
うつ傾向の改善効果の報告あり |
| アンチエイジング効果 |
肌・毛髪・骨格などの若返り |
美容目的のサプリに応用される |
加齢とDHEAの関係
| 年齢 |
DHEA分泌量（目安） |
特徴 |
| 思春期 |
急増 |
二次性徴の発現 |
| 20〜25歳 |
ピーク |
体力・性機能の最盛期 |
| 40歳以降 |
減少開始（ピークの約半分） |
疲労感、性欲低下、代謝低下など |
| 70歳以降 |
10〜20％程度 |
老化関連症状の一因とされる |
DHEAが低下すると起こりやすいこと
- 性欲減退、勃起力の低下（男性）
- 月経不順、閉経症状の悪化（女性）
- 疲労感、集中力低下
- 筋肉量・骨密度の減少
- 免疫力低下、肌の老化
- うつ傾向、ストレス耐性の低下
臨床での測定と活用
| 検査項目 |
内容 |
| DHEA-S（デヒドロエピアンドロステロン硫酸塩） |
血中で安定して存在する形。副腎機能の指標として測定される。 |
| 用途 |
・副腎機能低下症の評価・性ホルモン分泌のバランス確認・加齢や不妊症の研究的評価 |
サプリメントとしてのDHEA（補足）
- 欧米ではアンチエイジング補助としてサプリが流通しています（特に米国では市販可）。
- ただし日本では医薬品扱い（要処方）であり、個人輸入などは自己責任となるため注意が必要です。
| 期待される効果 |
注意点 |
| 性欲・活力向上、疲労回復、美肌 |
過剰摂取によりホルモンバランスを崩すおそれ（ニキビ・多毛・月経異常など） |
まとめ
| 項目 |
内容 |
| 名称 |
デヒドロエピアンドロステロン（DHEA） |
| 分泌部位 |
副腎皮質（網状層） |
| 調節 |
ACTHによる刺激 |
| 作用 |
性ホルモン前駆体、抗老化、免疫調整、代謝改善 |
| 主な関連ホルモン |
アンドロステンジオン、テストステロン、エストロゲン |
| 臨床的意義 |
副腎機能、性ホルモンバランス、加齢の指標 |
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