黄体形成ホルモンとは

黄体形成ホルモン(LH:Luteinizing Hormone)とは、脳の下垂体前葉から分泌される性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)の一種で、卵胞刺激ホルモン(FSH)とともに生殖機能の中心的役割を担うホルモンです。男女どちらにも分泌されますが、作用の内容は異なります。


分泌のしくみ

  • 視床下部が分泌する GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン) により、下垂体前葉が刺激されて LH が分泌されます。
  • LH の分泌量は、エストロゲン・テストステロン・プロゲステロン・インヒビンなどによってフィードバック制御されています。

女性におけるLHの働き

LHは排卵と黄体形成に深く関与しています。

時期 LHの働き 結果
卵胞期 FSHとともに卵胞の成熟を助ける エストロゲン分泌が増加
排卵直前 エストロゲン上昇によりLH分泌が急増(LHサージ 成熟卵胞が破裂し、排卵が起こる
排卵後 卵胞が黄体に変化し、LHが黄体を維持 黄体がプロゲステロンを分泌し、子宮内膜を維持

LHサージ(LH surge)
月経周期の中で最も特徴的な現象。排卵の約24〜36時間前にLHが急上昇し、これが排卵の引き金になります。
→ 排卵検査薬はこのLHサージを検出して「排卵のタイミング」を予測します。


男性におけるLHの働き

LHは精巣のライディッヒ細胞(間質細胞)に作用し、テストステロンを分泌させます。

作用部位 働き
精巣ライディッヒ細胞 テストステロンの合成を促進
テストステロンの働き 精子形成の促進(FSHと協働)、二次性徴の維持(筋肉・骨格・性欲など)

LHが低いとテストステロン産生が低下し、性欲減退・精子形成障害が起こります。
LHが高い場合は、精巣機能の低下(原発性性腺機能低下症)を示すことがあります。


LH値の臨床的意義

状況 LH値 主な原因例
高値 卵巣・精巣機能の低下(原発性性腺機能低下) 閉経、ターナー症候群、精巣萎縮
低値 視床下部・下垂体の異常(中枢性) 下垂体機能低下症、過度のストレス、摂食障害、過度な運動など
正常でも周期的変動あり 女性は月経周期で大きく変化 卵胞期低値 → 排卵期急上昇 → 黄体期中程度

FSHとの関係(女性)

ホルモン 主な役割 協働関係
FSH(卵胞刺激ホルモン) 卵胞の成長・成熟を促す LHと協働してエストロゲン分泌を促進
LH(黄体形成ホルモン) 排卵を誘発・黄体形成 FSHと協働し排卵を成立させる

まとめ

項目 内容
名称 黄体形成ホルモン(LH)
分泌部位 下垂体前葉
働き(女性) 卵胞成熟の最終段階を促進、排卵誘発、黄体形成・維持
働き(男性) 精巣のライディッヒ細胞を刺激し、テストステロンを生成
調節 GnRHによる促進、エストロゲン・テストステロンによる負のフィードバック
臨床意義 不妊症、月経異常、閉経、性腺機能低下の評価に使用