ファボワールの禁忌:一時的に血栓症リスクが著明に上昇している状態という共通点
経口避妊剤 ファボワールの添付文書にある禁忌「手術前4週以内、術後2週以内、産後4週以内及び長期間安静状態の患者」について解説します。
1. この禁忌の本質(共通点)
これらはすべて、
一時的に血栓症リスクが著明に上昇している状態
という共通点があります。そこにエストロゲン含有経口避妊薬(COC)を使用すると、静脈血栓塞栓症(VTE:DVT・肺塞栓症)を起こす危険が飛躍的に高まるため、禁忌とされています。
2. 手術前4週以内の患者とは
該当する患者
- 全身麻酔または脊椎・硬膜外麻酔を伴う手術予定
- 術後に下肢の動きが制限される可能性がある手術
- 整形外科手術(股関節・膝)
- 婦人科・腹部手術
- 大きな形成外科手術 など
なぜ「4週前」から?
- エストロゲンによる凝固因子増加は中止後もしばらく持続
- 手術自体が
- 血管損傷
- 炎症
- 血流停滞
を引き起こす
そのため、原則:手術の4週前には中止
3. 術後2週以内の患者とは
該当する患者
- 手術後 2週間以内
- 特に以下を伴う場合は厳禁:
- 歩行制限
- 下肢ギプス固定
- ベッド上安静
理由
- 術後は
- 炎症反応
- 脱水
- 血流停滞
が続く
- 血栓症リスクは術後1〜2週がピーク
十分な歩行再開・回復が確認されるまで再開不可
4. 産後4週以内の患者とは
該当する患者
- 分娩後4週以内(経腟分娩・帝王切開を問わず)
なぜ産後は特に危険か
- 妊娠・出産により
- 凝固因子↑
- 抗凝固因子↓
- 子宮復古・出血防止のため
→ 生理的に「血が固まりやすい状態」
産後は血栓症リスクが非妊娠時の約20〜60倍
産後4週以内のCOC使用は絶対禁忌
※母乳育児中はさらに注意(別項目で原則避ける)
5. 長期間安静状態の患者とは
該当する状態
- 長期臥床
- 入院中
- 在宅療養でほとんど歩かない
- 下肢固定
- ギプス
- 装具固定
- 長距離移動
- 長時間の航空機搭乗(特に動けない状況)
病態生理
- 筋ポンプが働かず
- 下肢静脈で血流停滞
- 血栓が形成されやすい
「日常生活で十分に歩行できない状態」は該当
6. これらの状態+ファボワールで何が起きるか
安静・手術・産後
↓
血流停滞 + 凝固亢進
↓
エストロゲン追加
↓
深部静脈血栓症
↓
肺塞栓症(致死的)
突然死リスクも否定できない
7. 実務的な判断基準(重要)
明確に禁忌
- 手術予定があり4週以内
- 術後2週以内で完全回復前
- 分娩後4週以内
- 臥床中心の生活
再開可能の目安
- 十分な歩行が可能
- 血栓症兆候なし
- 医師がリスク評価を行った後
8. 代替避妊法(この期間中)
- 黄体ホルモン単剤(POP)
- 銅付加IUD
- バリア法(コンドーム)
※エストロゲン非含有が原則
9. まとめ(要点)
| 状態 | 禁忌理由 |
|---|---|
| 手術前4週以内 | 凝固亢進が残存 |
| 術後2週以内 | 血栓リスクピーク |
| 産後4週以内 | 生理的高凝固状態 |
| 長期安静 | 血流停滞 |








