マーベロンの禁忌: 肝腫瘍のある患者

マーベロン(デソゲストレル/エチニルエストラジオール)の禁忌項目「肝腫瘍のある患者(症状が増悪することがある)」について詳しく解説します。添付文書がこの禁忌を設定している根拠は、エストロゲンが肝腫瘍(特に良性腫瘍)を増大させ、破裂出血を起こすリスクがあることにあります。


■「肝腫瘍のある患者」とは?

ここでいう「肝腫瘍」は、悪性腫瘍だけでなく、エストロゲンの影響を受ける肝臓の腫瘍を広く含みます。

特に問題となるのは以下です:

肝腺腫(Hepatic adenoma:肝細胞腺腫)

マーベロンが想定する代表的な対象です。
肝腺腫は、肝細胞から発生する良性腫瘍ですが、女性の発症例の多くに経口避妊薬の長期使用が関係していることが、50年以上前から医学的に知られています。

理由は:

  • エストロゲンが肝細胞の増殖を促進
    → 腫瘍が増大しやすくなる
  • 腫瘍が大きくなると自然破裂 → 腹腔内出血 → ショックという重大事故につながる
    過去に致死的な例が多数報告されている

そのため「肝腺腫」は世界のガイドラインでも経口避妊薬の絶対禁忌です。


■対象となる肝腫瘍の種類

添付文書は具体的疾病名を列挙しませんが、医学的に禁忌となる代表的な肝腫瘍は以下です。

① 肝腺腫(Hepatic adenoma:最重要)

  • 良性腫瘍
  • エストロゲン依存性
  • 経口避妊薬(特に高用量エストロゲン)と強い関連
  • 危険性:腫瘍破裂、出血、巨大化

臨床では最も注意される腫瘍です。研究では長期のCOC使用によりリスクが20〜40倍になるとされ、添付文書が“禁忌”としている最大の理由です。


② 肝血管腫(Hemangioma)

  • 肝臓にできる良性の血管腫瘍
  • エストロゲンに感受性を持つことがある

一般に禁忌扱いとされる理由は:

  • エストロゲンにより腫瘍が増大した症例報告が存在する
  • 大きくなると出血・破裂の可能性

ただし、非常に小さいものでは医師判断で使用が検討されることもあります。


③ エストロゲンで増悪しうる肝腫瘍

例:

  • 肝細胞癌(HCC:悪性腫瘍)
    エストロゲンの直接因果は明確ではないが、肝機能障害+腫瘍進展リスクにより使用は禁忌。
  • 肝内胆管癌
    同様に、肝機能と転移リスクの観点から禁忌

ただし「腫瘍増大」という意味では、禁忌の中心は肝腺腫です。


■なぜ禁忌なのか

◆① エストロゲンが腫瘍の成長を促進

エストロゲンは肝細胞の増殖シグナル(EGFR経路など)を刺激するため、腺腫の発育が促進されます。

→ 腫瘍が大きくなる
→血管が増える
→破裂しやすい

特に腹腔内大出血のリスクが深刻。


◆② 採用データ

  • 経口避妊薬長期使用者で、肝腺腫発症例が多数報告
  • 特に「高用量エストロゲン時代(1970-80年代)」に報告集中
  • 一部は破裂し死亡

低用量化された現代のマーベロンでも、完全にゼロではないため禁忌として維持されています。


◆③ 腫瘍破裂の危険性

肝腺腫は血流豊富な組織なので、増大すると:

  • 自然破裂
  • 腹腔内大量出血
  • 臓器不全
  • 緊急手術

が必要になる事があります。

「症状が増悪することがある」とは、腫瘍増大や破裂を含む重大事故を指すと思ってください。


■添付文書の意図(臨床での実務理解)

添付文書で「肝腫瘍」と広く書く理由:

  • まず肝腺腫は絶対禁忌
  • 肝血管腫など他腫瘍も、エストロゲン刺激で増大例があるため安全側で包括的に禁忌
  • 医師が「これは違う」と判断すべきではなく、腫瘍のある患者は専門医と相談の上で決定するべきという考え方

つまり「患者は自己判断では使用してはいけない」という方針です。


■どんな症例で特に禁忌?

  • 肝腫瘍の診断がついている
  • 肝腫瘍疑いで精査中
  • 腫瘍切除後で再発リスク評価中
  • 腹部画像で“腫瘍様”病変あり

この場合、使用は避けます


■WHOの国際基準でも「絶対禁忌」

国際的には、WHO MEC(Medical Eligibility Criteria)で:

  • 肝腺腫:カテゴリー4(絶対禁忌)
  • 肝腫瘍疑い:カテゴリー4
  • 肝細胞癌:カテゴリー4

日本の添付文書は、これに準拠した内容です。


■理解を深めたい場合

●肝腺腫の発生機序(簡略)

  • ER(エストロゲン受容体)発現細胞の増殖促進
  • HNF1A mutation等の遺伝子変異と合併
  • β-catenin活性化型は悪性化リスクあり

したがって、単純に「腫瘍が大きくなる」という話だけでなく、腫瘍の性質が変化する可能性も注意点です。


■まとめ

項目 内容
対象 肝腫瘍(特に肝腺腫、血管腫、肝癌)
禁忌理由 エストロゲンにより腫瘍増大・破裂リスク
危険性 腹腔内出血、ショック、救急手術
根拠 過去の多数の症例報告、WHOガイドライン
添付文書の意図 腫瘍を持つ患者はCOCは使わない

「肝腫瘍がある人は、エストロゲンで腫瘍が大きくなる可能性があり、危険な出血を起こすため、マーベロンは絶対に使ってはいけない」
これが禁忌項目の意味です。