ファボワールの禁忌:肝腫瘍のある患者

経口避妊剤 デソゲストレル・エチニルエストラジオール錠(ファボワール)添付文書の禁忌「肝腫瘍のある患者」について解説します。


1. 「肝腫瘍のある患者」とは

肝腫瘍のある患者とは、肝臓に良性または悪性の腫瘍性病変を有する、またはその疑いがある状態を指します。ファボワールに含まれるエストロゲンは、特定の肝腫瘍の増大・出血・破裂を促進することが知られており、生命に関わる合併症を引き起こす可能性があるため禁忌です。


2. 禁忌に含まれる肝腫瘍の具体例

① 肝細胞腺腫(最重要)

最も典型的かつ重要な禁忌対象

  • 若年女性に多い良性肝腫瘍
  • エストロゲン依存性
  • 経口避妊薬の長期使用と強い関連

なぜ危険か

  • 腫瘍の急速な増大
  • 自然破裂 → 腹腔内出血(致死的)
  • 悪性転化の報告あり(まれ)

肝細胞腺腫がある、または疑われる時点でファボワールは絶対禁忌


② 肝細胞癌(HCC)

  • 原発性肝癌
  • 背景に肝硬変や慢性肝炎を伴うことが多い

禁忌理由

  • 肝機能低下による薬物代謝障害
  • エストロゲンによる腫瘍増殖・血栓リスク増大
  • 出血リスク

③ 転移性肝腫瘍

  • 乳癌・大腸癌などからの肝転移

禁忌理由

  • 肝予備能低下
  • 腫瘍出血リスク
  • 全身状態悪化時の安全性が担保できない

④ その他の肝腫瘍(実務上の扱い)

腫瘍 扱い
限局性結節性過形成(FNH) 原則慎重(多くは非エストロゲン依存だが、添付文書上は避ける)
血管腫(巨大例) 出血リスクを考慮し原則避ける
肝嚢胞(単純) 通常は腫瘍扱いせず(鑑別が重要)

「肝腫瘍か否かが未確定」な場合も禁忌に準じる


3. なぜファボワールが肝腫瘍で禁忌なのか(機序)

① エストロゲンの増殖促進作用

  • 肝細胞腺腫の増大
  • 血管新生促進

② 出血・破裂リスク

  • 腫瘍内出血
  • 腹腔内大量出血 → ショック

③ 代謝・安全性の問題

  • 肝代謝低下 → 血中濃度上昇
  • 副作用増大

4. 添付文書の「肝腫瘍」の実務的解釈

明確に禁忌

  • 肝細胞腺腫
  • 肝細胞癌
  • 転移性肝腫瘍
  • 肝腫瘍が画像で確認されている

禁忌に準じる(原則使用しない)

  • 肝腫瘍疑いで精査中
  • 良悪性未確定の肝腫瘤

5. 肝腫瘍患者の代替避妊法

エストロゲン非含有が原則

推奨

  • 銅付加IUD
  • バリア法(コンドーム)

状況により検討

  • 黄体ホルモン単剤(腫瘍の種類・肝機能次第)
  • レボノルゲストレルIUS(専門医判断)

6. まとめ(要点)

項目 内容
肝腫瘍とは 肝の良性・悪性腫瘍を含む
最重要 肝細胞腺腫(エストロゲン依存)
なぜ禁忌 増大・破裂・出血・代謝障害
判断 確定例+疑い例も含め使用不可
代替 非エストロゲン避妊法