マーベロンの禁忌:血管病変を伴う糖尿病患者

マーベロンの添付文書に記載される 「血管病変を伴う糖尿病患者(糖尿病性腎症、糖尿病網膜症等)」とは何かを、わかりやすく解説します。


■「血管病変を伴う糖尿病患者」とは

マーベロン(低用量経口避妊薬)は、エストロゲンの血栓リスクがあるため、すでに血管に障害が起きている糖尿病患者では禁忌です。

ここでいう 「血管病変を伴う糖尿病」 とは、

糖尿病が原因で、網膜、腎臓、末梢神経、全身の血管などに障害(合併症)が発生している状態

を指します。

糖尿病は放置すると血管(特に毛細血管)にダメージが起こりやすく、これが 動脈硬化や塞栓症を誘発し、マーベロンの服用により血栓症のリスクがさらに上がります。


■禁忌となる具体例

添付文書では例として以下が挙げられています:

① 糖尿病性腎症(Diabetic nephropathy)

糖尿病で腎臓の糸球体が障害され、以下のような状態になる病態:

  • 微量アルブミン尿
  • 明らかな蛋白尿
  • 血液検査で腎機能低下(eGFR低下)
  • 高血圧を伴う
  • 末期腎不全に進展する場合もある

→ 腎障害が進むほど心血管イベントのリスクが高くなります。


② 糖尿病網膜症(Diabetic retinopathy)

糖尿病で眼の網膜の血管が障害され、視力に影響する病態:

  • 出血や滲出、血管新生など
  • 緑内障・視力障害につながる

→ 網膜の毛細血管障害は、全身の血管障害の指標とされます。


③ その他の血管障害(添付文書に明記はなくとも臨床で含まれることが多い)

医師判断で「血管病変あり」と判断される例:

●末梢動脈疾患(PAD)

  • 下肢の血流障害
  • 間欠性跛行など

●糖尿病性神経障害(血流障害が背景)

  • 感覚障害、足潰瘍の原因になる

●脳や心臓の動脈硬化性病変

  • 虚血性心疾患
  • 脳梗塞の既往など

※添付文書で明確に列記されているのは腎症・網膜症ですが、臨床上は微小血管・大血管に病変がある場合すべてが禁忌に含まれると考えます。


■なぜ禁忌なのか(機序)

マーベロンに含まれる エチニルエストラジオール(エストロゲン)は:

  • 血液凝固因子を増加
  • 血栓溶解能を低下
  • 血小板凝集を促進

し、血栓症(深部静脈血栓症、肺塞栓、心筋梗塞、脳卒中) のリスクが上がります。

糖尿病で血管がすでに脆弱化し、炎症が進み、内皮機能が低下している場合、このリスクが 相乗的に上昇します。

特に 腎症は心血管イベントの最大のリスク因子であり、禁忌として強い理由があります。


■どのような患者が該当するのか(臨床判断)

基本的に以下の場合は マーベロン禁忌になります。

◆ 医師が「血管合併症あり」と診断

  • 網膜症の診断(眼科診断)
  • アルブミン尿+糖尿病(腎症)
  • eGFR低下(腎機能低下)
  • 糖尿病性潰瘍の既往
  • 糖尿病性神経障害が重度
  • 既往に脳卒中・心筋梗塞・狭心症

など。

◆ 早期の軽度病変

  • 微量アルブミン尿
  • 非増殖型網膜症
    など、初期でも血管障害が始まっているため 禁忌に含めるのが一般的です。

■逆に「合併症がない糖尿病」は禁忌か?

血管合併症のない糖尿病は、添付文書では 慎重投与に分類されることが多いです。
つまり 禁忌ではないが注意が必要です。

ただし現場では以下の判断が行われます:

  • HbA1c良好(7%未満)
  • 合併症がない(眼科・腎臓正常)
  • 喫煙なし
  • 高血圧なし
  • 肥満なし

→ この場合は医師がリスクを判断した上で処方可能とされます。


■まとめ

区分 マーベロン使用
血管病変あり 腎症、網膜症、PAD、潰瘍、動脈硬化性疾患 禁忌
血管病変なし 合併症なしの糖尿病 慎重投与
前糖尿病 HbA1c境界域 原則可能(他リスクで判断)

■簡潔な定義

糖尿病によって網膜や腎臓などの血管に障害が生じている患者で、血栓症や動脈硬化のリスクが高く、低用量ピルにより合併症が悪化する可能性がある状態。

これが添付文書における 「血管病変を伴う糖尿病患者」の意味です。