ピルの副作用
ピル信頼できる避妊との他、生理に関わる不順などさまざまなメリットがありますが、副作用もあります。特に初めて使う場合、程度の軽い副作用が一定の期間起こることがありますが、やがて治まることが多いです。ごく稀に血栓症など重大な副作用がおこることもあります。
ピルは1960年代に米国で経口避妊薬として開発されてから、副作用を減らすために改良が進められています。現在では大きく分けて第1から第4世代のピルが利用できますが、必ずしも新しい薬に副作用が少ない、古くからある薬には多いと一概には言えません。ピルを使う人の状況によって合う合わないがでてくることがあります。
ピルの「世代別」 | |
第一世代 | シンフェーズ、ルナベルなど |
第二世代 | トリキュラー、ラベルフィーユなど |
第三世代 | マーベロン、ファボワールなど |
第四世代 | ヤスミン、ヤーズなど |
ここではピルの副作用のうち、心配があまり要らないものから、滅多にはないものの非常に注意が必要なものについて説明します。気になる症状が出た場合は、医師に相談して下さい。(診察料は不要です。緊急の場合はお電話も可)症状によって、処方するピルを変えたり、対処法についてご相談をお受けします。
比較的かるい副作用
以下に挙げる副作用は、特にピルの飲みはじめにおこるホルモンバランスの変化によって一時的に起こり得るものでマイナートラブルとも呼ばれます。いずれの場合も一時的であることが多く、3か月ほど服用を続けるとバランスが整い、症状の多くは次第におさまってゆきます。ただし症状が強かったり、悪化したり、継続する場合は、ピルの種類との相性や、その他に何らかの原因がある可能性があります。
吐き気
ピルによって体内に取り込まれた、女性ホルモンのバランスの変化によって吐き気が起こることがあります。多くの場合、起こっても日常生活に支障は感じない程度で、1〜2週間くらいで改善します。もしこれ以上の期間続いたとしても、3シート(3ヶ月)以上続けるとホルモンバランスが再調整され、吐き気は治まることがほとんどです。吐き気が続く期間内に、服用後2時間以内に嘔吐しまった場合、避妊効果が得られない可能性があります。このような場合は吐き気止めの服用含め、医師に状況を説明して判断を仰いでください。
頭痛
吐き気と同じく、ピルによる一時的な女性ホルモンのバランスの変化によって頭痛が起こることがあります。多くの場合、起こっても日常生活に支障はない程度で、1〜2週間くらいで改善します。痛みが強い場合は鎮痛剤も使えますが、薬を購入する時はピルとの併用に問題がないか、医師や購入するドラッグストアの薬剤師に確認して下さい。
乳房痛
生理が近づくと乳房が張る感じがすることはないでしょうか。これに似た症状(あるいは痛みを感じるまでの張り感)がピルによる一時的な女性ホルモンのバランスの変化によって起こることがあります。多くの場合、1〜2週間くらいで改善し、3ヶ月目くらいからは改善に向かいます。
太る?
「ピルは太る」という噂はあります。しかし低用量ピルと体重増加の間に因果関係はありません。ただし、飲みはじめ時の体内のホルモンの変動により、食欲亢進がおこることはあります。もし起こっても一定期間だけですので、その間は食生活の改善や適度な運動などを心がけて下さい。
不正出血
初めてピルを使う方の2割程度に(特に第1週目)少量の出血が現れることがあります。これも他の副作用と同様、体内のホルモンバランスがピル服用によって一時的に乱れるのが原因です。ほとんどの場合、ホルモンバランスが安定してくる2~3シート目(2~3か月目)以降治まります。まれに、3シート目以降も不正出血も続くことがあります。その場合はピルの種類を変更するか、他に原因(飲み忘れ、下痢、性感染症、がん他)がないかを確認するため医師にご相談下さい。
重大な副作用
ピルで起こり得る重大な副作用に血栓症があります。血栓症は極めて稀な副作用ですが、ピルを飲んでいる人はほんの少しリスクが高くなります。
女性1万人人あたり血栓症発症者(年間) | |
ピルを服用していない女性 | 1~5人 |
ピル服用している女性 | 3~9人 |
妊婦 | 5~20人 |
分娩後12週の女性 | 40~65人 |
血栓症とは
血栓症とは何らかの原因によって血栓(血のかたまり)ができ、血管を詰まらせる病態の総称です。これが起こると血流が阻害され各部位に栄養が届かなくなります。その結果、機能障害や、各組織の壊死を引き起します。
ピルが血栓症を起こし得る原因
ピルに含まれるエストロゲンは、血液を固まりやすくする作用を持ちます。ピルの服用によって血液中のエストロゲン量が変わること、同時に脱水状態にあることなどで血液が固まりやすくなる状態が生まれることがあるとされています。
このようになったら要注意
次のような症状が出たらすぐにピルの服用を中止し医師に相談して下さい。(電話でもかまいません)。緊急の場合には救急医療を求めて下さい。
・激しい頭痛
・言葉のもつれ
・激しい腹痛
・激しい胸痛・息苦しさ
・激しいふくらはぎの痛み、むくみ
ピルによる血栓症の発症リスクは、飲み始めてから約3ヶ月以内が最も高いです。特にこの期間はご自身の身体の変化に注意が必要です。
低用量ピルによる血栓症のリスクが高い人
また、次の特徴に当てはまる人は血栓症のリスクをより高めます。
●40歳以上である
●血栓症の既往歴がある(または親族がいる)
●肥満(BMI30以上)
●前兆を伴う片頭痛がある
●糖尿病など生活習慣病がある
●長時間うごかない(デスクワーク、入院中、飛行機内など)
●妊娠中もしくは分娩後 など
ピルによる血栓症の発症リスクは、飲み始めてから約3ヶ月以内が最も高いです。特にこの期間はご自身の身体の変化に注意が必要です。
がんについて
リスクが上がる部位
乳がん:低用量ピルの使用は、乳がんのリスクがわずかに増加する可能性があります。乳がんがある方は原則低用量ピルは使えません。近親者に乳がんを持つ方も注意が必要です。
子宮頸がん:長期間にわたり低用量ピルを使用することで、子宮頸がんのリスクがわずかに増加する可能性があります。低用量ピル内服中は特に子宮頸がん検診を受けることが重要です。
リスクが下がる部位
子宮体がん:子宮体がんの悪化はエストロゲンの影響によると考えられていますが、低用量ピルに含まれるプロゲステロンによって発生率が低下すると考えられています。ホルモンのバランスが整えられることで、子宮内膜が正常に保たれるためです。
卵巣がん:卵巣がんの発生には排卵の継続や炎症などが関わっています。低用量ピルは排卵自体を止めるため、がん発生が抑えられるようです。これは使用期間が長いほどリスク低下の効果が強くなる傾向があります。
まずは3ヶ月使ってみる
ピルの安全性は高いですが、飲み始めで身体の調子が悪くなってしまうと、不安に感じることがあります。不快な時期が一時期あっても、飲み続けることで解消されることが多いです。吐き気や痛みには症状に対処する薬も使えます。もし副作用があった時は、様子をみながら無理のない範囲でまずは3ヶ月飲み続けてみてください。また心配なことがあればいつでも医師にご相談下さい。