加味帰脾湯

■ 加味帰脾湯(かみきひとう)とは

加味帰脾湯は、精神的疲労や不眠、動悸、倦怠感などを伴う虚弱体質の改善に用いられる漢方薬です。古典『傷寒論』や『金匱要略』に由来する帰脾湯(きひとう)を基に、さらに精神面や消化器症状に対応できるよう生薬を加味した処方です。名前の「帰脾」は「脾(消化器)を補い、心(精神)を安定させる」ことを示しています。


■ 構成生薬(主なもの14種類前後)

生薬名 主な作用
人参(にんじん) 気を補い、全身のエネルギーを増強
白朮(びゃくじゅつ) 胃腸の働きを整える
茯苓(ぶくりょう) 利水作用、精神安定、倦怠感改善
甘草(かんぞう) 炎症抑制、薬の調和
当帰(とうき) 血を補い、貧血や冷え改善
竜眼肉(りゅうがんにく) 心を養い、精神安定、不眠改善
酸棗仁(さんそうにん) 不眠、精神の安定
遠志(えんじ) 記憶力や集中力の改善、神経安定
黄耆(おうぎ) 気を補い、免疫力・体力向上
枳実(きじつ) 胃腸の働きを助け、消化促進
甘草・木香など 気の巡りを整え、腹部の張りや不快感改善

ポイント:気血両方を補い、心と脾を同時に整え、精神面と消化器症状を改善する漢方処方です。


■ 効能・効果(日本薬局方などの記載)

  • 倦怠感・疲労
  • 動悸・息切れ
  • 不眠・眠りが浅い
  • 食欲不振・消化不良
  • 精神的緊張やストレスによる体調不良

■ 適する体質と症状

状況 説明
精神的疲労 ストレスでイライラ・不安・緊張が続く
不眠 眠れない、眠りが浅い
動悸・息切れ 心臓のドキドキや疲労感を伴う
食欲不振・消化不良 胃腸が弱く、疲れると食欲が落ちる
体質 気血両虚、虚弱体質で精神・消化器両面に不調がある人

「心血不足+脾気虚」の両方を補う処方で、精神・消化器・体力の総合回復に向く漢方です。


■ 現代的な臨床応用

  • 慢性疲労や倦怠感の改善
  • 不眠や入眠困難の改善
  • 動悸・息切れ・めまいの補助療法
  • 産後や病後の体力回復
  • ストレスによる食欲不振や消化不良の改善

■ 注意点

  • 強い体力虚弱で下痢傾向のある人は慎重に
  • 精神疾患(うつ病や統合失調症など)では医師管理下で使用
  • 服用中に便秘や下痢、体のほてりなどが出る場合は調整

■ 類似処方との比較

処方名 主な特徴 体質傾向
加味帰脾湯 気血両方を補い、心と脾を整え、精神・消化器症状改善 精神疲労・不眠・消化器虚弱タイプ
帰脾湯 気血を補い、精神面の安定・倦怠感改善 体力低下・心血不足タイプ
十全大補湯 気血両方を補い、全身の体力回復 疲労・冷え・病後回復タイプ

■ まとめ

加味帰脾湯は「心と脾を同時に整え、気血を補う漢方薬」。
精神的疲労、不眠、倦怠感、食欲不振、動悸など、体力と精神の両方の回復に用いられる。
「心血不足+脾気虚」の両方を補う、虚弱体質向けの総合補剤です。