マーベロンの禁忌: 重篤な肝障害のある患者

マーベロン(デソゲストレル+エチニルエストラジオール)の禁忌「重篤な肝障害のある患者」についてわかりやすく詳しく解説します。添付文書の意図・臨床での判断基準・なぜ禁忌なのかを整理しています。


■「重篤な肝障害のある患者」とは?

重篤(severe)な肝機能の障害が存在し、肝臓の代謝・解毒機能が著しく低下している状態の患者を指します。「重篤」の判断には、診断名(疾患)・検査値・症状の複合的評価が用いられます。

マーベロン(Combined Oral Contraceptive=COC)は、エチニルエストラジオールとデソゲストレルが肝臓で代謝される薬剤であり、肝機能障害がある患者では薬物が通常通り処理できません。さらに、エストロゲンは肝臓を通じて凝固因子のバランスを変化させるため、血栓症リスクも上昇します。そのため、重篤な肝障害患者は COX の使用が国際的に禁忌とされています。


■対象となる代表的な疾患

添付文書は具体例を列挙しませんが、一般的に医学的に「重篤な肝障害」として扱われる状態は以下です:

●肝硬変(特に中等度〜高度)

  • Child-Pugh分類 B〜C
    ※アルブミン低下、黄疸、腹水、凝固異常がある状態
  • 門脈圧亢進あり

●急性肝炎(重症型)

  • 急性肝不全(劇症肝炎)
  • 黄疸、血液凝固異常がある状態

●慢性肝炎(非代償性)

  • ALT/AST異常に加え、肝機能低下を伴うケース

●胆汁うっ滞を伴う肝疾患

  • 原発性胆汁性胆管炎(PBC)
  • 胆汁うっ滞性肝炎(妊娠性も含む場合あり)

●肝腫瘍(特にエストロゲン影響を受ける腫瘍)

  • 肝腺腫(hepatic adenoma)
    ※エストロゲンで増大・破裂リスクあり

●高度の肝機能障害を伴う自己免疫性肝疾患

  • 自己免疫性肝炎で肝不全進行中

■検査値・臨床的な重症度の目安

臨床では、以下の所見がある場合「重篤」と判断されることが一般的です:

血液検査

  • ビリルビン上昇(黄疸)
  • アルブミン低値(蛋白合成能低下)
  • PT/INR延長(凝固因子低下)
  • アンモニア上昇(脳症リスク)
  • AST/ALT極めて高度上昇

症状

  • 黄疸(皮膚や眼球が黄色)
  • 腹水
  • 肝性脳症(意識変化、錯乱)
  • 全身倦怠感、出血傾向
  • 皮下出血、鼻血、歯肉出血

画像所見

  • 肝萎縮・線維化が高度(肝硬変)

■なぜ禁忌なのか(医薬学的理由)

◆薬物代謝ができない

マーベロンは肝臓で代謝される薬であり、肝機能が低下すると以下の問題が生じます:

  • 分解されず血中濃度が異常に上昇
    → 副作用の増強
  • 半減期が延長
    → 過量投与状態と同じ

◆血栓症のリスク増加

エストロゲンは肝臓に作用し、以下の変化を起こします:

  • 凝固因子の合成増加
  • 抗凝固因子の低下

結果として、静脈血栓塞栓症(VTE)、脳梗塞、肺塞栓症のリスクが強く上昇します。
肝障害患者は既に凝固系が不安定であり、この影響が顕著になります。

◆肝腫瘍への影響

エストロゲンは特に肝腺腫を増大させることが知られており、破裂性出血リスクがあります。


■注意が必要な「軽度〜中等度の肝障害」

「禁忌」とはされないが注意が必要な患者もいます:

  • 軽度の脂肪肝
  • ウイルス性慢性肝炎(代償期)
    ※ALT/AST上昇のみ、黄疸などなし
  • アルコール性肝障害の初期段階

こうした場合は、医師が状態を評価し、リスクにより使用可否を判断します。


■関連する判断基準(国際ガイドライン)

世界的には、WHO MEC(Medical Eligibility Criteria)という基準があり、COC使用の安全性を評価します。

  • 肝硬変(非代償期)はカテゴリー 4:絶対禁忌
  • 肝硬変(代償期)はカテゴリー 3:一般的に推奨不可
  • 急性肝炎:カテゴリー 4
  • 肝腺腫:カテゴリー 4

これに基づき、日本でも「重篤な肝障害」は禁忌扱いです。


■まとめ

項目 内容
対象 肝臓の重度機能障害がある患者
代表疾患 肝硬変、急性肝炎、肝不全、肝腺腫、胆汁うっ滞性肝炎など
理由① 薬物が代謝できず副作用増強
理由② 凝固因子変化により血栓症リスク増加
理由③ 肝腫瘍を増大させる可能性
国際基準 WHOMECで禁忌分類

■一言解説

「肝臓で分解する薬なので、肝臓が悪い人は薬の量が体内で増え、血栓や肝障害が悪化する危険が高い」

というのが添付文書「重篤な肝障害のある患者」の意味です。