マーベロンの禁忌:高血圧のある患者
「マーベロン(低用量経口避妊薬)における禁忌:高血圧のある患者(軽度の高血圧の患者を除く)」 の意味を、臨床的意義も含めて詳しく解説します。
添付文書の意図を丁寧に読み解く形でまとめています。
■禁忌項目の原文
高血圧のある患者(軽度の高血圧の患者を除く)
[血栓症等の心血管系の障害が発生しやすくなるとの報告がある。また、症状が増悪することがある。]
■この禁忌が意味する患者とは?
【1】“高血圧”とは一般にどのレベルを指すのか
添付文書では「軽度の高血圧を除く」とあるため、高血圧の重症度によって扱いが異なります。
一般的な臨床現場では以下のように解釈されます(ガイドラインに基づく参考)。
| 分類 | 血圧値の目安(診察室) | マーベロンの扱い |
|---|---|---|
| 正常 | < 120/80 | 使用可能 |
| 正常高値 | 120~139/80~89 | 通常、使用可能(他リスクがなければ) |
| 軽度高血圧(Grade1) | 140~159/90~99 | ※注意して使用可能と判断される場合あり |
| 中等度高血圧(Grade2以上) | ≥160/≥100 | 禁忌 |
→「軽度高血圧(Grade1)」は禁忌ではないが、慎重投与(医師判断)、
「中等度〜重度高血圧」は明確な禁忌と理解されます。
ただし 他のリスクがある場合は150/95以下でも禁忌判断になることがあります
(喫煙・肥満・片頭痛・糖尿病など)。
■なぜ高血圧だとマーベロンが禁忌なのか?
マーベロンには エストロゲン(エチニルエストラジオール) が含まれています。
エストロゲンは以下の作用を持つため、血栓症および心血管イベントのリスクが上昇します。
エストロゲンの影響
- 血液凝固因子を増加させる(凝固傾向)
- 血栓溶解能を低下させる
- 血圧を上昇させる可能性
- 血管内皮機能に影響
- レニン–アンジオテンシン–アルドステロン系に影響し体液貯留 → 血圧上昇
そのため、元々高血圧がある人にマーベロンを服用すると、さらに心血管障害のリスクが増加します。
■具体的に懸念される疾患
高血圧とエストロゲンを併用することで、以下が起きやすくなります:
血栓症関連
- 深部静脈血栓症(DVT)
- 肺塞栓症(PE)
- 脳梗塞
心血管系疾患
- 心筋梗塞、狭心症
- 血圧急上昇(高血圧緊急症)
- 脳出血(コントロール不良の場合)
■どんな患者が特に危険か
単なる血圧の値だけでなく、総合的リスクで危険度が上がります。
例:
- 35歳以上の喫煙者(別の禁忌項目)
- 肥満(BMI ≥30)
- 片頭痛(特に前兆あり)
- 糖尿病
- 脂質異常症
- 家族歴による血栓性素因
- 過去に血栓症歴
このような場合、軽度高血圧でも禁忌判断になることが多いです。
■軽度高血圧が「除外される」理由
理由は以下です:
- 低用量ピルは歴史的に比較的安全性が高く、
血圧が軽度で合併症がない場合、リスクは許容範囲と考えられる。 - 公開データでは、健康な若年女性の軽度高血圧で
重大血栓イベントが少ない。
ただしこれはあくまで統計上の話であり、個別判断が必要。
■使用を検討する場合の実務
臨床的には 以下のプロセスを必ず踏みます:
① 正確な血圧測定
- 診察室血圧だけでなく家庭血圧も参考にする
② 二次性高血圧の除外
- 甲状腺、腎疾患など
③ 心血管リスクの評価
- 喫煙、脂質、血糖、BMI
④ 他の避妊方法の提供
- プロゲスチン単剤ピル(禁忌少ない)
- 子宮内避妊具(IUS、IUD)
- バリア法など
■患者に説明するときの表現例
「マーベロンは血栓症のリスクがあるお薬で、高血圧の方が飲むと血管や心臓の病気が増える可能性があります。特に血圧が160/100以上の場合や他の危険因子がある場合は使えません。血圧コントロールが良好であれば別の避妊方法も一緒に検討しましょう。」
■まとめ
●禁忌に該当する「高血圧のある患者」とは?
- 中等度以上の高血圧(160/100以上)
- 軽度高血圧でも他にリスク要因がある場合
- 治療していてもコントロール不良
- 心血管疾患リスクが高い場合
●なぜ禁忌か?
- エストロゲンの凝固促進作用
- 血栓症、脳卒中、心血管イベントの増加
●軽度高血圧は“除外”される理由
- 統計的に大きなリスク上昇が見られないため、条件付きで使用可能な場合がある







