トリキュラーの禁忌:前兆を伴う片頭痛の患者

トリキュラー(レボノルゲストレル・エチニルエストラジオール)の禁忌のひとつにある、前兆(閃輝暗点、星型閃光等)を伴う片頭痛の患者について、順を追って解説します。


1. 禁忌の文言の意味

  • 片頭痛(migraine):頭痛の一種で、拍動性の頭痛、吐き気、光・音過敏を伴うことが多い。
  • 前兆(aura):頭痛の前に起こる視覚・感覚・言語の異常。代表的なもの:
    • 閃輝暗点:視界の一部が光ったり、欠けたりする
    • 星型閃光:小さな光の点や線がチカチカする
    • 感覚障害、言語障害、手足のしびれなども前兆に含まれる

つまり、視覚や神経症状を伴う片頭痛の患者は、この禁忌に該当します。


2. なぜ片頭痛(前兆あり)が禁忌なのか

トリキュラーにはエチニルエストラジオール(エストロゲン)が含まれています。
エストロゲンには以下の作用があります:

  1. 血管反応性を高める
    • 脳血管が収縮・拡張しやすくなる
  2. 血栓形成リスクを増加
    • 凝固因子増加、血液が固まりやすくなる

片頭痛の前兆がある場合、すでに脳血管の一過性収縮や血流変動が起きやすい状態です。
ここにエストロゲンを投与すると:

  • 脳梗塞や脳血管障害の発症リスクが高まる
  • 特に若年女性でも血栓性脳卒中の報告がある

そのため、前兆を伴う片頭痛は絶対禁忌に設定されています。


3. 前兆のない片頭痛とは違うのか

  • 前兆なしの片頭痛(一般的な拍動性頭痛のみ)
    → 原則慎重投与。脳血管リスクは前兆ありより低い
  • 前兆ありの片頭痛(視覚・感覚症状がある場合)
    → 禁忌。血栓性脳卒中リスクが明確に上昇する

ポイントは「神経症状を伴うかどうか」です。


4. 発症リスクの統計

  • 女性で前兆あり片頭痛 + 経口避妊薬使用の場合、
    脳梗塞のリスクは非使用者の約4~8倍に上昇
  • 喫煙・高血圧が重なるとさらにリスク増大
  • 前兆なし片頭痛ではリスク上昇はほぼない

5. 臨床での対応

  • 既往に前兆あり片頭痛がある場合 → 絶対にトリキュラー使用不可
  • 前兆なし片頭痛 → 医師判断で慎重投与
  • 他の避妊方法を検討:
    • プロゲスチン単剤ピル(低血栓リスク)
    • 子宮内避妊具(IUD)
    • コンドームなど非ホルモン法

 6. まとめ

項目 内容
禁忌対象 前兆(閃輝暗点、星型閃光等)を伴う片頭痛患者
意味 視覚・感覚の前兆を伴う片頭痛の女性
禁忌理由 脳血管反応性が高まった状態でエストロゲン投与 → 血栓性脳卒中リスク増
発症リスク 非使用者の4~8倍、喫煙や高血圧があるとさらに増加
医学的対応 トリキュラーは使用せず、非エストロゲン系避妊法を選択