女性過剰性欲障害
「女性過剰性欲障害」について、医学的な視点から分かりやすく整理して解説します。結論として、現在の医学では「過剰性欲障害」という正式名称の病名は存在しません。社会で使われる言葉と、医学的な概念を分けて理解することが大切です。
1. 「女性過剰性欲障害」とは何か?
一般に「過剰性欲」と表現される状態は、
- 性欲が非常に強い
- 性的な衝動が自分では抑えられない
- 性的行為・自慰行為が生活に支障をきたす
- 性的な刺激や行為を求める思考が常に頭から離れない
といった状態を指す“俗称”です。
医学的には、以下の概念に含まれます。
医学的に近い概念
● 強迫性性的行動症(Compulsive Sexual Behavior Disorder:CSBD)
WHO(世界保健機関)の ICD-11に登録されている正式な診断名です。
特徴は:
- 繰り返される強い性的衝動・行動
- 行動をコントロールできない
- 行動の結果に苦痛や問題が起きる
- 人間関係、仕事、健康に支障が出る
- 減らそうとしても成功しない
※性欲が強いだけでは「障害」とは診断されません。
「本人が苦痛を感じている」「社会生活に影響が出ている」が必須です。
● 双極性障害の躁状態
躁状態のとき、性衝動が異常に高まり、性行動が増加することがあります。
これは疾病の症状の一部として起こります。
● 薬剤性の性欲亢進
一部の薬剤は性欲を高める作用があります。
例:
- ドパミン系薬(パーキンソン病薬)
- 一部の抗うつ薬
- ホルモン治療(テストステロン、DHEAなど)
● ホルモン異常
- 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
- 副腎腫瘍によるアンドロゲン過剰
などでも性欲が強く感じられる場合があります。
2. 性欲が強い=病気ではない
ポイントは、
「性欲が強い」だけでは病気ではない
ということです。
性欲は、
- ホルモンの状態
- 個人差(性欲は性格・体質)
- 年齢
- 体調
- 文化による抑圧/解放
などによって大きく変わります。
健康で自然な高い性欲はむしろ正常な場合が多いです。
3. 「障害」となる基準
次のような場合、「障害」と診断される可能性があります:
● 生活への支障
- 仕事、家事、学業が手につかない
- 寝不足や健康被害
- 性行動のために日常が崩壊する
● 人間関係への問題
- パートナーとの関係悪化
- 強迫的に誰とでも関係を持つ
- 社会的問題
● 本人の苦痛
- あまりに衝動が強く「つらい」と感じる
- 止めたいのに止められない
- 自己嫌悪や抑うつが強い
こうした状況では専門医による診断・支援が必要です。
4. 原因とメカニズム
CSBDの原因には複数の要因が関係します。
■ 心理・脳機能
- ドパミン報酬系の過活動
- 衝動コントロール機能の弱化
- 強迫性習慣形成
■ 精神医学的背景
- 双極性障害
- ADHD
- 強迫性障害(OCD)
- パーソナリティ要因
■ 外的要因
- 過去のトラウマ
- 性的虐待歴
- 情緒的ストレス
- スマホなど刺激の無限供給
5. 診断と治療
■ 診断
精神科医や臨床心理士が、
- 症状の重さ
- 生活への影響
- 背景に疾患がないか
- 薬剤影響
- ホルモン検査
などを行って総合的に判断します。
■ 治療方法
- 心理療法
- 認知行動療法(CBT)
- マインドフルネス
- 衝動制御トレーニング
- 薬物療法
原因に応じて:
- SSRI(強迫傾向が強い場合)
- ムードスタビライザー(双極性の場合)
- 抗不安薬
- ホルモン異常への治療
- 生活習慣改善
- スマホ・刺激源の制御
- 睡眠
- 運動
- セルフコントロール習慣
6. 誤解されやすい点
● 性欲の強さは“正常範囲の差”が大きい
女性も男性も、性欲には大きな個人差があります。
● 性的な好奇心は病気ではない
自由で健康的な性は「障害」ではありません。
● 社会規範による罪悪感で“病気と思う”ケース
文化的に女性の性欲が抑圧されていた結果、
「普通の性欲でも罪悪感を持つ」人もいます。
7. 女性に特有の要因
女性の場合、性欲の大きな変動が見られます:
- 排卵期(性欲ピーク)
- 妊娠期
- 産後(ホルモン変動)
- 更年期前後
- ピルや薬剤の影響
また、心理的親密性や恋愛感情によって急激に性欲が高まることもあります。
8. まとめ
✔ 医学的名称は「女性過剰性欲障害」ではない
近い概念は「強迫性性的行動症(CSBD)」。
✔ 性欲が強いだけで病気ではない
生活に支障、本人の苦痛があるとき「障害」と診断される。
✔ 背景には心理・精神・ホルモン・薬剤など多数
特にドパミン報酬系と衝動制御の問題が重要。
✔ 治療は心理療法が中心、場合によって薬物療法
本人の状態に合わせた治療が必要



